米金融不安発生から1カ月~米金融システムの現状を確認する

2023/04/12

米金融不安発生から1カ月~米金融システムの現状を確認する

    • 3月15日から4月5日まで、FRBの窓口貸出は約832億ドル減少も、BTFPは約671億ドル増加。
    • FRBの流動性支援は続いているが、これも奏功して金融ストレス指数はマイナスの領域に低下へ。
    • 金融システムが混乱する恐れは小さいが、この先信用条件が引き締まるリスクは考慮が必要だろう。

3月15日から4月5日まで、FRBの窓口貸出は約832億ドル減少も、BTFPは約671億ドル増加

米国では、3月8日のシルバーゲート銀行の自主清算発表や、3月10日のシリコンバレーバンク(SVB)破綻などを受け、金融不安が一気に高まりました。現時点で、1カ月が経過しましたが、その後は銀行の連鎖的な破綻もなく、金融不安は和らぎつつあるように見受けられます。そこで、今回のレポートでは、米国の金融システムの現状を確認し、今後の注意点について考えます。

まず、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融機関への資金供給状況について、3月15日と4月5日を比較すると、窓口貸出が約832億ドル減少した一方、FRBが3月12日に公表した流動性対策、Bank Term Funding Program(BTFP)は約671億ドル増加しました(図表1)。その他信用供与は、米連邦預金保険公社(FDIC)が設立した、つなぎ銀行(破綻銀行の預金の移管先)向け融資ですが、約318億ドル増加しています。

FRBの流動性支援は続いているが、これも奏功して金融ストレス指数はマイナスの領域に低下へ

一般に、金融機関の市場での資金調達が困難となれば、窓口貸出やBTFPの残高は増加することになりますが、前述の残高変化をみると、金融機関は窓口貸出の利用を減らし、BTFPの利用を増やしていると推測されます。ネットでは、約161億ドル減少しましたが、4月5日時点の残高は、窓口貸出が約697億ドル、BTFPは約790億ドルとなっており、依然としてFRBによる金融機関への流動性支援は続いていると解釈されます。

次に、米セントルイス連銀が算出する「金融ストレス指数」を確認してみます。同指数は、数値がゼロの場合、正常な金融市場の状況を表し、ゼロを下回る場合は平均よりも弱いストレス、ゼロを上回る場合は平均よりも強いストレスが、金融市場に発生していることを示唆します。直近の動きをみると、3月17日に1.57台まで上昇しましたが、FRBの流動性支援もあり、3月31日には-0.32台まで低下しています(図表2)。

金融システムが混乱する恐れは小さいが、この先信用条件が引き締まるリスクは考慮が必要だろう

なお、金融ストレス指数は、コロナ・ショック時に5.29台(2020年3月20日)、リーマン・ショック時に9.22台(2008年10月10日)まで上昇しており、これらと比べると、今回の金融不安によるストレスは、それほど大きくないことが分かります。ただ、米国の大手行や主な地銀で構成されるKBWナスダック銀行株指数は、80ポイント前後の安値圏での推移が続いており、2月高値の115.10ポイント(終値ベース)は回復していません。

現時点で、過度な金融不安は後退しつつありますが、このような銀行株の動きを見る限り、市場には依然として一定程度、警戒感が残っているように思われます。少なくとも、金融機関がFRBからの流動性支援を受け続けている間は、金融システムが混乱する恐れは小さいとみていますが、この先、企業や家計向けの融資基準が厳格化し、信用条件が引き締まるリスクは、やはり考慮しておいた方が良いと考えます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

 

(2023年4月12日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ