TACO? 関税通知にも市場は冷静
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◆相互関税は8月1日から25%に。自動車関税は25%のまま
弊社では月に1回の頻度でマーケット情報関連動画(SMTAM’s View)をホームページ上に公表しています。6月30日リリースの最新版では「ついに来る7.9相互関税期限」と題し、7月は自動車関税の撤廃・引き下げの有無が重要という当方の見解などをご紹介しました。
こうしたなか、トランプ米大統領は、7月7日に石破首相宛ての書簡を公開しました。25%の相互関税を8月1日から課すことや、自動車などの分野別関税を変更しないこと等が記されました。
◆TACO的楽観論に広がり
この7月最大の注目イベントを、金融市場は概ね落ち着いて消化しました。特に株式市場の値動きは意外なほど底堅いものでした。書簡が公表された翌日(8日)と翌々日(9日)は、日経平均株価は続伸しました。株価堅調の背景として、①関税発動の事実上の延期と捉えられたこと、②一部で懸念された30%超への関税率引き上げがなかったこと、③日銀による早期の利上げが困難になるとの見方が広がったこと、④円安が進んだこと、等が理由と指摘されました。また、⑤自動車への25%関税が当面続くことは、ある程度織り込み済みだったということでしょう。
このうち①②は「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプ氏はいつもひるんで退く)トレード」と呼ばれ、8月1日以降への再々延期や、今後の関税率引き下げがあり得るとの見方も内包していそうです。現在の株式市場では、トランプ関税への警戒よりTACO的楽観論の方が支配的と言えるでしょう。
◆自動車メーカーの業績や賃上げ姿勢への負の影響は?
ただし、TACO的楽観論に過度に傾くことにはやや不安もあります。10日公表の6月企業物価指数によると、北米向け乗用車の輸出価格は6月に前年比▲26.3%と5月から一段と落ち込みました。日本の自動車メーカーが米国での販売価格を維持するため、関税相当分を値下げしていることを意味します。経営には逆風になっているとみられ、今後の業績や賃上げへの影響は、引き続き注視する必要がありそうです。
◆通商白書の鋭い指摘
経産省は6月27日に年に一度の通商白書を公表しました。トランプ関税等を受けて、例年になく注目されたなか、丁寧な分析が多く展開されていました。例えばトランプ関税についての、「貿易赤字解消、製造業の国内回帰、雇用、経済安全保障、税収の確保、過剰なドル高の修正といった関連する政策目標の相互関係や優先順位、それらと関税引上げとの関係性は、必ずしも明らかではない」という整理が目を引きました。「こうした政策的な一貫性を巡る曖昧さが、米国の通商政策を巡る不確実性を高める要因となっている」との鋭い指摘もありました。
市場ではトランプ政策の一貫性の曖昧さを見抜いた上で、TACO的楽観論が拡大しているのかもしれません。ただ、曖昧さは不確実性の温床でもあります。丁寧な政策ウォッチを継続することが重要です。
シニアストラテジスト 稲留 克俊

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