米テーパリングでも流動性相場は終了せず
米テーパリングでも流動性相場は終了せず
- 米金融当局はテーパリングを11月中旬か12月中旬に開始、来年半ばごろ終了の方向で検討中。
- 議事要旨では米国債の購入額を100億ドル、MBSを50億ドルそれぞれ毎月減らす案が示された。
- テーパリングでも証券購入は当面続き、FRBの総資産残高は増加するため、流動性相場は継続。
米金融当局はテーパリングを11月中旬か12月中旬に開始、来年半ばごろ終了の方向で検討中
米連邦準備制度理事会(FRB)は10月13日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(9月21日、22日開催分)を公表しました。9月のFOMCでは、声明文に「経済の改善がおおむね予想通りに進めば、資産購入のペースを早急に緩和する必要があると判断する」との文言が追記され、量的緩和の縮小(テーパリング)開始が近いことが正式に示されました。
さらに今回の議事要旨では、テーパリングのスケジュールについて議論が進んでいることが明らかになりました(図表1)。具体的には、FOMC参加者は総じて、景気回復がおおむね順調なら、来年半ばごろに終了する緩やかなテーパリングが適切と評価しており、また、11月2日、3日に開催される次回のFOMCでテーパリング開始を決定する場合、11月中旬か12月中旬に開始できるとの見方が確認されました。
議事要旨では米国債の購入額を100億ドル、MBSを50億ドルそれぞれ毎月減らす案が示された
FRBは現在、米国債を800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を400億ドル、それぞれ毎月購入していますが、議事要旨では、これらの購入金額を減らす案も提示されました。FRBのスタッフによる減額案は、毎月の購入額について、米国債を100億ドル、MBSを50億ドル、それぞれ減らしていくというもので、計算上、8カ月でテーパリングを終えることになります。
この案について、FOMC参加者は政策を決定する上で分かりやすいと総じて評価しており、実際にテーパリングが開始された際、減額ペースの目安になると思われます。なお、FRBの総資産残高は直近で約8兆5,000億ドルに達していますが、仮に11月からテーパリングが始まり、前述の減額案に沿って米国債とMBSの買い入れ額が減少していった場合、総資産残高はどのように推移するか検証してみます。
テーパリングでも証券購入は当面続き、FRBの総資産残高は増加するため、流動性相場は継続
結果は図表2の通りで、テーパリングが終了する2022年6月末時点において、FRBの総資産残高は約9兆ドルに達する見通しとなり、これは直近から約6%増加した水準です。当然ながら、テーパリングが始まっても、米国債とMBSの毎月の購入額は段階的に減少するものの、購入自体は続くため、金融機関に対する流動性の供給は継続され、FRBの総資産残高は増加し続けることになります。
なお、FRBは過去、テーパリングが終了しても、満期を迎えた保有証券を再投資することで、総資産残高を3年ほど維持した経緯があります。今回も、テーパリング終了後、総資産残高はしばらく維持される公算が大きいと思われます。したがって、テーパリングによって流動性相場が直ちに終了することはなく、悪材料発生時に潤沢な流動性が金融市場の緩衝材の役割を果たす状況は、当面続くと思われます。
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