来週の金融市場見通し(2025年6月2日~2025年6月6日)
■来週の見通し
米国際貿易裁判所は、トランプ米大統領が4月に発表した貿易相手国への関税措置(相互関税など)は大統領の権限を越えたものだとして差し止める決定を下しました。貿易摩擦への懸念が一旦後退しましたが、連邦高裁が関税措置について当面の効力認めたことから、不透明感は残ります。他方、エヌビディアの2025年2~4月期決算は、売上高が四半期として過去最高を記録し、市場予想も上回りました。来週は、米政権の動向や内外の経済指標に加え、植田日銀総裁の講演なども確認したいところです。
◆株価 :米経済指標に注目
今週の日本株は、荒い値動きのなか上昇しました。29日は米国際貿易裁判所が、トランプ政権が発動した相互関税などの関税措置の停止を命じたことが好感され、上昇しましたが、30日に連邦高裁が関税措置の当面の効力を認める判断をしたことを受け、上げ幅を縮小しました。半導体関連株は、エヌビディア株が決算発表後に上昇したことが支えとなり、上昇しました。
来週は、企業の景況感や雇用に関する米経済指標発表が注目されます。経済指標が米景気の底堅さを示す内容になると、安心感から株式市場に資金が流入することが予想されます。関税に関する報道を受けて、一時的に調整する場面もありそうですが、事業法人による自社株買いが高水準で継続しており、底堅い展開が予想されます。
◆長期金利 :居所を探る
今週の長期金利は、財務省が今後、需給不安が強まっている超長期債の発行額を減らすとの思わくが高まり、超長期債利回りとともに低下しました。ただ、40年国債入札が低調な結果となったことから、長期金利は下げ幅を縮小しました。その後は一旦上昇したものの、週末は米関税政策の不透明感が広がり、低下に転じました。
来週は一進一退の中、居所を探る展開を予想します。財政拡張への警戒に加え、物価上振れへの警戒から日銀の追加利上げも意識され、長期金利は低下し難い状況です。もっとも、財務省が超長期債の減額を検討しているとの報道は、長期金利の上昇を抑制しそうです。長期金利は1.5%前後、30年債利回りも3.0%前後と高い水準にあり、一段の金利上昇局面では押し目買いが入る可能性もありそうです。10年国債入札も確認したいところです。
◆Jリート :徐々に上値を模索
今週のJリート市場は、週初から堅調に推移したものの、40年国債入札が低調な結果となり、再び長期金利が上昇したことや、東証REIT指数(配当なし)1,750ポイントでは戻り売りが出て、週後半はやや値を下げました。今週末の分配金利回りは5.054%(東証上場REITの予想分配金利回り、QUICK算出)でした。
来週は、日米長期金利や日米通商協議の動向を睨みながら、徐々に上値を模索する展開になることを想定しています。足元、長期金利が1.5%前後の水準で推移し、年初来高値を更新する可能性もあり、Jリート市場の下押し圧力は継続しそうです。また、日米通商協議が難航すると投資家心理が悪化することが見込まれます。とはいえ、日銀が利上げに慎重な姿勢を示していることや、5%程度の予想分配金利回りに着目した一定の買いが引き続きJリートを下支えすることが期待されます。
◆為替:一進一退
今週は、米国とEUの通商合意への期待が高まったことや、米消費者信頼感の急回復、国内超長期金利の低下などを受けて、ドル円は一時146円台まで上昇しました。ただ、週末にかけては米関税政策の不透明感が高まったこと、弱い米経済指標が散見されたことなどから143円台に下落しました。
来週のドル円は、変動性の高い中、一進一退の動きが見込まれます。米司法判断も絡み、米関税政策の先行き不透明感や米景気後退懸念が根強いことから、基本的にはドル円の上値余地は限定的とみられます。また、日米関税協議の行方は、今後の展開によっては大きく相場を上下に動かす要因となりそうなことから要注意です。このような環境下、ドル円の上値は重いとみられるものの、一進一退の神経質な展開が想定されます。
◆米国株 :米経済指標に注目
今週の米国株は、底堅い動きになりました。トランプ大統領がEUへの追加関税の発動時期を延期したことなどが株価を押し上げました。29日に米国際貿易裁判所が、トランプ政権が発動した相互関税などの関税措置の停止を命じたことも好感されました。半導体関連株は、エヌビディアの決算発表で、人工知能関連需要の底堅さが示されたことが好感され、上昇しました。
来週は、企業の景況感や雇用に関する米経済指標発表が注目されます。経済指標が米景気の底堅さを示す内容になると、安心感から株式市場に資金が流入することが予想されます。ただし、裁判所の関税措置に関する判断が不透明なほか、米財政悪化懸念から、米長期金利が高止まりしており、上値の重い動きとなることが予想されます。
■来週の注目点
毎月勤労統計調査(4月) 6月5日(木)発表
毎月勤労統計調査によると、3月の名目賃金(現金給与総額)は前年比+2.3%の増加と、前月(同+2.7%増)から伸びが縮小しました。また、実質賃金は同-1.8%と、3か月連続で減少しました。一般労働者の所定内給与の伸びが縮小したほか、食料品を中心とする物価高騰が続いているため、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかない状況が続いています。
4月の実質賃金は減少が続くものの、マイナス幅が縮小することが見込まれます。一部の企業において、高い伸びとなった今年の春闘での賃上げ率が適用されることで、一般労働者の所定内給与の伸びが拡大すると予想されます。
米雇用統計(5月) 6月6日(金)発表
米雇用統計によると、4月の非農業部門雇用者数は前月差+17.7万人増と、市場予想を上回る結果でした。トランプ政権下で進められている連邦政府職員削減の影響は限定的であったほか、民間セクターではサービス部門を中心に雇用の拡大が続きました。失業率は4.2%、平均時給は前年比+3.8%増と、ともに前月から横ばいとなりました。
5月の非農業部門雇用者数は前月差+13.0万人増、失業率は4.2%、平均時給は前年比+3.6%増程度を想定しています。5月中旬にかけての新規失業保険申請件数は増加しており、雇用統計においても関税政策の影響を受けた雇用情勢の軟化が示される可能性があります。
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