株安を止める方法(その2)~政府の役割が極めて重要

2020/03/18

株安を止める方法(その2)~政府の役割が極めて重要

  • ウイルスに起因する市場の混乱は政府の役割が重要、まずは感染拡大の防止策が最優先事項。
  • 同時に家計や企業に的を絞った財政政策が必要、対応遅延で株急落なら、包括的財政政策も。
  • 主要国は相応規模で包括財政を打ち出し感染のピークアウトと株価反転を待つ時間との戦いへ。

ウイルスに起因する市場の混乱は政府の役割が重要、まずは感染拡大の防止策が最優先事項

前回のレポートに引き続き、今回も株安の連鎖を断ち切る方法を考えます。リーマン・ショックによる株安は、「金融機関」に起因していたため、金融機関を救済するための「金融政策」が重視されました。これに対し、今回のコロナ・ショックによる株安は、「ウイルス」に起因しているため、政府の役割が極めて重要で、まずは政府による「感染拡大の防止策」が最優先事項となります。

政府による感染拡大の防止策には、移動制限や検査体制の強化、医療体制の整備、治療薬およびワクチンの開発加速などが含まれます。しかしながら、移動制限で人やモノの行き来が停滞すれば、経済に極めて強い下押し圧力が生じ、その影響を最も大きく受けるのが家計や企業です。そのため、これらの主体をしっかりと支援する政策が同時に必要であり、感染拡大の防止策だけでは不十分といえます。

同時に家計や企業に的を絞った財政政策が必要、対応遅延で株急落なら、包括的財政政策も

移動制限などで影響を受ける家計や企業の支援には、「的を絞った財政政策」が求められます。家計向けの支援策としては、休業補償や感染時の有給休暇、失業保険の拡充、一時的な資金需要に対応する緊急融資などが考えられます。企業向けで重要なのは資金繰り対策です。特に、売り上げ減少に直面する中小企業や小規模事業者には、仕入れ代金(買掛金)の支払いが滞らないよう、政府系金融機関による積極的な運転資金の融資が必要です。

政府による感染拡大の防止策と、的を絞った財政政策は、できるだけ早い段階での実施が望ましいのですが、対応が遅れてしまうと、株式市場では景気後退(リセッション)を織り込み、大幅な株安が進む恐れがあります。この段階で必要となるのは、「包括的な財政政策」です。個人向けでは消費税率や所得税率の引き下げ、税額控除の拡大など、企業向けでは法人税率の引き下げなどが考えられます(図表1)。

主要国は相応規模で包括財政を打ち出し感染のピークアウトと株価反転を待つ時間との戦いへ

金融政策についても、通常の利下げでは、移動制限という特殊な環境下において十分な効果が期待できず、やはり的を絞った施策が求められます。ただ、中央銀行は、家計や企業に直接融資はできないため、民間銀行などを通じて間接的に支援することになります。具体的な施策として、家計や企業の資金繰りを支える民間銀行向けの資金供給や、企業債務(社債やコマーシャル・ペーパーなど)の買い取りなどが想定されます。

世界的な株安が進行するなか、包括的な財政政策も、すでに相当な規模が必要になりつつあります。政策が後手にまわって家計や企業の債務が焦げ付けば、銀行の信用不安と金融危機に発展し、株価が長期にわたり低迷する恐れがあります(図表2)。今後、主要国は包括的な財政政策を中心に措置を講じると思われ、感染者数の世界的なピークアウトと株式市場の本格的な反転上昇を待つ時間との戦いになる見通しです。

(2020年3月18日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ