米金融引き締め観測の後退と金融市場
今回のFOMCのポイント:
- FRBは市場の予想以上に金融引き締めに慎重なハト派に
- 利上げは棚上げ、終了の可能性も浮上
- バランスシートの縮小についても早めに終了し、最終的なバランスシートの規模が大きくなる可能性も(FRBが量的緩和によって供給した緩和マネーの吸い上げが停止)
- 金融引き締めによる景気、企業業績の抑制への懸念は後退
- 米金利の上値も限定的になる可能性
- ドルについても、金融引き締めによる上昇は限定的になる可能性
▣ 予想以上のハト派
米連邦準備制度理事会(FRB)は1月29、30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決めましたが、市場の予想以上に金融引き締め(利上げ、バランスシートの縮小)に慎重なハト派的な内容でした。
声明文からは、「いくらかのさらなる緩やかなフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジの引き上げ・・・」という緩やかな利上げが適切とする文言が削除される一方、「FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整に辛抱強くなる」と、利上げの棚上げを示唆しました。
また別の声明で、「経済、金融動向を考慮しながら、バランスシート正常化の完了に向けて詳細を調整する用意がある」「さらにバランスシートの規模と構成内容を変更する用意がある」と、バランスシート(保有資産)の縮小に柔軟な姿勢を示しました。
他方、パウエルFRB議長は、「中国や欧州の景気減速や、ブレグジット、貿易摩擦、米政府機関の一部閉鎖など経済成長に逆行する流れがみられる」「利上げの可能性はいくぶん弱まった」「資産縮小は従来の想定よりも早く完了し、規模も大きくなる」と、昨年12月に見せたやや強気の姿勢を大きく後退させた格好です。
▣ リスク資産や米債に安心感
FRBはリーマンショックを受け、政策金利(FF金利の誘導目標レンジ)を一段と引き下げるとともに、非伝統的な金融政策の手段である量的緩和政策を導入し、米国債などの資産を大量に購入し、資金を市場に供給してきました(図表1)。資産買入れの終了後も、保有残高を維持するため、米国債などの償還金を再投資してきました。その後、利上げについては2015年12月に開始する一方、償還金の再投資については2017年10月から減額し、保有資産を縮小してきました。4.5兆ドル程度あったFRBの資産規模は足元では4.05兆ドル。市場では3.5兆ドル程度で、縮小を停止するとの見方も出ています。
利上げ打ち止めとなれば、住宅ローンや企業の借り入れコスト上昇への警戒が後退するとともに、大規模なバランスシートが維持されれば、大量の緩和マネーが市場に残ることから、リスク資産に資金が向きやすくなる(リスク資産に向かっていた緩和マネーが逆流する懸念が後退する)ことも想定されます。
また、米金利は上昇しにくくなるとともに、米金利がピークの政策金利の水準に収れんし、イールドカーブ(利回り曲線)が一段とブル・フラット化(利回り低下・平たん化)することも想定されます(図表2)。ドルについても金融政策からは上昇しにくくなりそうです。
今後は、米中貿易摩擦や米政府機関の一部閉鎖の影響などを確認しつつ、FRBのバランスシート縮小の停止時期や規模などの具体的な方針を待つことになります。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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