FRB、利上げ見通し引き下げも市場とかい離
▣ 予想どおり利上げ決定、政策金利見通し引き下げ
米連邦準備制度理事会(FRB)は12月18-19日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、予想どおり政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、2.25~2.50%とするとともに、2019年以降の政策金利見通しを引き下げました(図表1)。
声明文では前回と同様、「労働市場は引き続き力強さを増し、経済活動は力強いペースで拡大していることを示している」と指摘する一方、「若干のさらなる緩やかな(some further gradual increases)」利上げと、若干(some)という文言を付け加え、利上げペースの鈍化/打ち止めを示唆しました。また、「グローバル経済と金融の動向を引き続き監視し、経済見通しへの影響を評価する」との文言も付け加えました。
注目のFOMC参加者の政策金利見通しのポイントは、
- 2019年の利上げ回数は3回から2回に減少
- 2020年に1回利上げ、2021年利上げなしは変わらず、利上げの休止は2020年
- 中立金利の目安となる長期見通しは0%から2.75%に引き下げ
などが挙げられます。景気を刺激も抑制もしない中立金利までの距離は近くなったものの、中立金利到達後も1回~2回、政策金利を引き上げる姿勢は変わっていません。
▣ FRBは市場に優し過ぎない
19日、FOMC参加者の政策金利見通しで、2019年の利上げ回数が9 月時点の3 回から2 回に引き下げられたことが伝わると、NYダウは一時約380ドル高となりました。ただ、パウエルFRB議長の記者会見での「バランスシートの正常化(これまでに買入れた米国債などの資産の圧縮)はこれまでのところスムーズで、変更するつもりはない」との発言を受け、それほどハト派ではない(金融緩和縮小に慎重ではない)との見方が広がり、米国株は急落する動きになりました。
▣ 市場が織り込む利上げ回数はやや上昇したものの
米短期金融市場が織り込む2019年の利上げ回数は、FOMCの結果公表前の18日には0.5回を下回り、今年12月で利上げ打ち止めとの見方が強かった模様ですが、19日には、予想以上には政策金利見通しが引き下げられなかったことから、0.5 回強まで戻しました(図表2)。戻したとはいえ、2019年に1回利上げができるかは半々との織り込みです。また、2020年以降は、短期金利(FFレート)は横ばいもしくはやや低下するとの見方に変わってきています(図表3)。
▣ 米債券市場はあと1回の利上げをほぼ織り込んだ水準
今回、金融市場では早期の利上げ打ち止めを催促する形で、株安・債券高(長期金利低下)が進行しました。これに対し、パウエル議長は市場が望む以上の政策は打ち出しませんでした。今後、何らかの金融政策の変更を催促する金融市場の動き(催促相場)は弱まる、もしくはFRBは市場の期待に対し最大限には応えない可能性がありそうです。
また、中立金利の水準(長期見通し)は引き下がったものの、中立金利を上回る利上げの可能性を残しました。残存期間1年以上の米国債の利回りは2.6%を上回っており、あと1回の利上げは、ほぼ織り込んだ水準にあります(図表4)。仮に、来年1回の利上げがあったとしても、長期金利の上昇は限定的とみられます。2回利上げの可能性が高まると、米金利に上昇圧力が掛かる可能性があります。とはいえ、利上げ打ち止めとの見方が広がると、米金利の上昇が抑えられることも想定されます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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