米イールドカーブの一部が逆イールドに

2018/12/07

▣ 2年物金利と5年物金利が逆転

米国の債券市場で、イールドカーブ(利回り曲線)の一部に逆イールドが発生し、米景気減速/後退への警戒感が広がっています。12月3日以降、2年債利回り(2年物金利)が5年債利回り(5年物金利)を上回る状態が続いています。まだ、イールドカーブの一部の利回りが逆転しただけですが、景気後退(リセッション)の予兆とされ、最も注目される2年と10年の利回り差も12bp(1bp=0.01%)程度まで縮小してきています(図表1、2)。

2009年7月に始まった米国の景気拡大局面は戦後2番目の長さとなっており、そろそろ景気拡大局面の終盤に差し掛かっているのではないかとの見方がくすぶっていることに加え、トランプ減税の景気押し上げ効果が一服してきている中、米中貿易摩擦の影響なども懸念され、金融市場では米国の景気後退への警戒感が浮上している格好です。

▣ 逆イールドとは

イールドカーブは債券の利回りと残存期間(償還までの期間)の関係をグラフにプロットした場合の曲線で、通常は期間の長い債券ほど利回りが高くなる右肩上がりの順イールドになります。

とはいえ、短期金利(期間の短い利回り)は政策金利に連動して動く一方、長期金利は実体経済のファンダメンタルズ(経済成長率、物価上昇率、失業率などの経済活動の状況を示す基礎的要因)などを反映します。景気が良ければ将来的な利上げ(継続)を織り込み長期金利は上昇、逆に景気悪化なら利下げ(継続)を織り込み長期金利は低下することが見込まれます。将来的な利下げを織り込み、満期までの期間が長い金利(債券の利回り)が期間の短い金利を下回る状態は逆イールドと呼ばれます。

イールドカーブ上で長短金利が横並びになる形状や右肩下がりになる逆イールドは、利上げ局面のピーク時の前後に現れます。現在の長短金利差の縮小は、早期の利上げ打ち止め観測を反映した格好です。

▣ 過去4回のうち、3回はリセッション入りだが

 80年代後半以降で、長短金利がマイナスになったのは88年12月、98年4月、2000年2月、2005年12月の4回で、98年を除き、その後約1年~2年で景気後退入りしました。ただ、景気後退はそれぞれ、湾岸戦争・オイルショック、ITバブル崩壊、サブプライム問題・リーマンショックの影響が大きいとみられます。“長短金利逆転→景気減速”の可能性は高そうですが、景気後退まで見込むのは、やや過剰反応と言えるかもしれません。

米連邦準備制度理事会(FRB)はこれまで慎重に、そして緩やかに利上げを継続してきました。米金融当局者からは、政策金利が景気を過熱も冷やしもしない中立金利に達した後も、利上げを継続するとの発言も出ていましたが、米経済の緩やかな減速が見込まれる中、無理に政策金利を引き上げ、景気を急激に冷やすことは避けるとみられます。90年代後半はリセッション入りをまぬがれました。

予断を許しませんが、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC、18-19日)で、利上げに慎重な姿勢が示されると、市場に安心感が広がることも想定されます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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