内外株価の急落について
▣ 米金利上昇をきっかけに、内外株価が急落
10月2日、3日と連日で最高値を更新したNYダウでしたが、米長期金利の大幅上昇などを受けて下げに転じ、10日には831ドル安と2月8日以来の下げ幅を記録、11日も545ドル安と続落しました(図表1)。国内株式市場も、米国株の急落を受けて投資家心理が悪化したことや円高進行などから、11日には日経平均株価が915円安となるなど、大きく下落しました(図表2)。
10月3日発表の9月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数が過去最高を更新したことなどを背景に、米経済が良好さを保っているとの見方が広がる中、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げに前向きな姿勢を示したこと、5日発表の雇用統計(9月)で失業率が3.7%と48年9か月ぶりの水準まで改善、平均時給上昇率は前年比2.8%と今年2番目の高さとなったことを受け、米長期金利は9日には一時3.26%と7年5か月ぶりの水準まで上昇しました。
他方、ハリケーン「マイケル」(米本土に上陸するハリケーンとしては2004年以来で最強)がフロリダ州に上陸したことに加え、トランプ米大統領が、中国が対米報復関税措置を実施すれば2,670億ドル相当の中国製品に対し追加関税を発動するとあらためてけん制するなど、米中貿易摩擦への警戒も米国株の下押し材料となった模様です。
▣ 2月のVIXショック時は
今回の金利上昇を契機とした株価の急落では、今年2月のVIXショックも意識されます。2月5日に発表された1月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比20万人増と予想を上回り、また平均時給も前年比2.9%の上昇と高い伸びとなりました。市場ではFRBの利上げペースが加速するとの観測から、米長期金利が大きく上昇したことがきっかけとなり、NYダウは1,175ドル安と過去最大の下げ幅を記録しました。
VIX(ビックス)指数は、市場が織り込む今後予想されるボラティリティ(変動の大きさ、変動性)を指数化したもので、平時には10~20 で推移し、20 を超えてくると市場の不安感が強まっているとの見方ができます。ボラティリティは価格変動リスクの指標で、ボラティリティの上昇により、投資家がリスクを圧縮する(米国株を売って運用資産の価格変動リスク(ボラティリティ)を減らす)動きを強めたことで、米国株の下落を増幅させることになりました。今回は、VIX指数は10日には22.96、11日には24.98と久しぶりに警戒水準の20を超えたものの、2月5日の37.32をまだ大きく下回っています(図表3)。
VIXショックの際には、NYダウは直近高値である1月26日の水準(終値)から2月8日までに10.36%下落しました。ただ、その後は良好な企業業績や米景気を支えに、すぐにこの下げの半値戻しの水準まで上昇しました。
▣ 調整後の底打ちを探る
米労働省が11日発表した9月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.1%と8月の+0.2%から鈍化、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは2か月連続で前月比+0.1%と、インフレ圧力はさほど強まっていません。投資家のリスク回避から米国債への逃避需要が強まったこともあり、米長期金利はやや落ち着いてきています。
今回の急落は、好調な米景気が続く中、相場の過熱感が強まっていたことから、米株式市場に一旦スピード調整が入った格好です。ただ、NYダウの直近高値(10月3日)から11日までの下落は6.62%(終値ベース)と、VIXショック時より小幅で、一段安も警戒されます。
目先は、12日から決算発表が本格化する米国企業の業績、10月15日前後に公表される米国の為替報告書が注目されます。企業業績は良好とみられるものの、中国が為替操作国に認定されるとさらなる制裁への警戒が強まる可能性があります。他方、中間選挙後には減税の第2弾やインフラ投資などの景気対策が打ち出されるとの期待は支えとなりそうです。
内外の株価はしばらく、企業業績、米金利の動き、トランプ政権の通商政策、中間選挙に向けた経済対策などを確認しながら、底打ちを探ることになりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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