限定的な金利上昇
▣ ±0.25%との意見も
日銀は8月8日、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定した7月30、31日の金融政策決定会合の「主な意見」を公表しました。長期金利の変動幅については、±0.25%との意見も出されたようですが、長期金利上昇を懸念する意見もあり、大方の委員の合意として、「概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くこと」に落ち着いた模様です。また、消費者物価の前年比は、「緩やかにプラス幅の拡大を続けていくとみられるが目標の2%に達するには暫く時間がかかると見込まれる」などの意見も出ており、金融緩和の長期化が意識されているとみられます。
債券市場はこの決定を受け8月2日まではやや荒い展開が続きましたが、足元では再びこう着感が強まっています。日銀が2日に「5年超10年以下」を対象にした臨時の国債買入れオペを実施したことを受け、動きが止まった格好です(図表1)。
▣ 日銀は小幅なベア・スティープ化を容認
日銀は、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」の枠組みのもと、その時々の「経済・物価・金融情勢」を判断基準としながら、物価目標2%の実現のために最も適切なイールドカーブの形成を促すとしています。今回の「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」では、副作用などを勘案し、日銀が適切と考えるイールドカーブ(利回り曲線)がベア・スティープ化(利回り上昇・急こう配化)したとも考えられます。
長期金利の水準については、一時0.145%まで上昇した2日に、臨時の国債買入れオペが実施されたことから、0.15%が目先の日銀が許容する上限として意識されます。また、日銀が毎月末に公表する長期国債の「当面の月間買入予定」で示される1回当たりオファー金額の中央値を基準額(中立な買入れ額)と考えると、オファー金額が基準額を上回っていた「3年超5年以下」は6月に、「5年超10年以下」は8月に、基準額まで減額されています。日銀は長期ゾーンまでの金利を抑える姿勢から、足元の金利水準を維持する姿勢になった模様です。他方、超長期ゾーンについては、「10年超25年以下」、「25年超」のオファー金額は、段階的に基準額から引き下げてきており、やや利回り上昇を促しているとも解釈できます。
▣ こう着状態の中で押し目待ち
ただ、金融政策の将来の指針であるフォワードガイダンスが導入され、短期金利だけでなく長期金利についても現行の水準が当分の間、維持される方針が示されたことから、大幅なベア・スティープ化の可能性は低いとみられます。
日銀は現在、YCCで長期金利などの水準を管理しようとしています。長期金利は、日銀が上昇を容認したことから低下しにくくなっているものの、2日の臨時オペで0.15%を超える上昇にはストップがかかったことから上値も限定的で、水準がやや上方にシフトしたこう着状態が続く可能性があります(図表2)。当面は、日銀による管理相場で金利急騰の危険性は低いことから、狭いレンジの中で、超長期債などへの押し目買いの機会を探すことになりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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