戻ってきた連動性
▣ ドル円と金利差の連動性が戻ってきた
2016年以降、ドル円はおおむね日米の長期金利(10年債利回り)の差に連動して動いてきましたが、今年に入り連動性が大きく崩れました(図表1)。2月前後の米長期金利の急上昇への警戒が強まり、内外の金融市場が不安定になったこと、またトランプ米政権の通商政策への警戒が強まったことなどを背景に、逃避通貨とされる円を買う動きが強まったことから、日米の金利差に関係なく、ドル円が下落する展開になりました(図表2)。
最近ではトランプ政権が中国に対する制裁関税の2,000億ドル相当の追加措置案を公表したものの、中国が対抗措置などを打ち出していないことから、米中貿易摩擦への過度な警戒が後退していることも手伝い、ドル円は再び日米金利差との連動性が戻ってきています。
▣ 長期金利より2年債利回り
もっとも、ドル円は2.8%台でこう着している米長期金利ではなく、政策金利に大きく影響を受ける2年債利回りなどの期間の短い日米金利差との連動性が強まっています(図表3)。
米国の政策金利については、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は7月17、18日の議会証言で、「当面、段階的なフェデラルファンド(FF)金利の引き上げの継続が最も適切」としました。
米短期金融市場が織り込む9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は90%近くまで、12月についても60%前後まで上昇してきており、6月の政策金利見通しで示された年内あと2回、50bp(1bp=0.01%)の利上げが見込まれます。
▣ 利上げは年内あと2回
現在の米国の政策金利であるFF金利の誘導目標レンジは1.75~2.0%。このレンジの中心1.875%と米2年債利回りのかい離は73bp前後ですが、今後は緩やかな利上げに合わせ、このかい離は縮小していき、利上げ局面終了前後で、ほぼゼロ%になることが見込まれます(図表4)。
今年あと2回の利上げが実施された場合、米2年債利回りは単純に50bp上昇するわけでなく、政策金利とのかい離が縮小する形で、50bpを下回る上昇にとどまるとみられます。
米中貿易摩擦への過度な警戒が後退し、ドル円が111円程度から112円後半まで急伸した7月12日以降の動きを除いて、米2年債利回りからみたドル円の水準を大ざっぱに推計すると、米2年債利回りとドル円はそれぞれ、2.8%で112.8円程度、2.9%で113.8円程度が目安になります。貿易摩擦への警戒が一段と後退すると、もう少しドル円は上昇する可能性があります。
▣ ドル円は、日米金利差+米通商政策
とはいえ、トランプ大統領はインタビューで19日、「パウエルFRB議長はとても良い人物だが、金利を引き上げており、好ましくない」、「米国の通貨は上昇しており、我々が不利な状況に置かれている」と、利上げとドル高をけん制しました。ホワイトハウスはFRBの独立性を尊重するとしており、今後の利上げへの影響はほとんどないとみられるものの、ドルには影響がありそうです。
他方、貿易摩擦への懸念は依然としてくすぶります。米商務省は19日、自動車の追加関税について、国内外の企業、業界団体、政府関係者を招いた公聴会を開きました。米自動車会社からも反対の声が上がった模様です。来週25日には、欧州連合(EU)欧州委員会のユンケル委員長が訪米し、トランプ大統領と通商問題について会談する予定です。米中間の貿易摩擦に加え、米国が自動車・自動車部品の輸入制限に踏み切ると、リスクオフ(回避)が強まり、米金利やドル円の上値が抑えられることも想定されます。
ドル円は日米金利差に連動しながらのドル高・円安地合いと言えそうですが、米国の通商政策に振らされながらの推移になりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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