ユーロが持ち直すと国内株も

2018/06/08

▣ 南欧不安は後退

昨年、ドル円に代わって国内株を支えた格好のユーロ円ですが、4月下旬以降、イタリアやスペインの政局混乱への警戒などから不安定な動きが続いていました(図表1、2)。

ただ、イタリアでは6月1日に、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と極右「同盟」が連立政権を樹立し、上院、下院の信任を得て、6日に正式に発足しました。ユーロ残留の是非を問う事実上の国民投票となってしまう可能性があった再選挙が回避されました。また、イタリアのコンテ新首相は所信表明演説後の討論会で、ユーロ離脱について「一度も考えたことがない」と言明する一方、スペインではラホイ首相が退任し、親欧州連合(EU)の新政権が発足することになったことで、南欧の政局不安は大きく後退しています。

▣ ECBは資産買入れの終了時期を示唆するか

他方、欧州中央銀行(ECB)理事会が14日に開かれます。ユーロ圏の1-3月期の経済成長率は6四半期ぶりの低水準に落ち込み、経済活動を示すユーロ圏総合購買担当者指数(PMI、5月)が1年6か月ぶりの水準に低下するなど、ユーロ圏経済の鈍化が懸念される中、資産買入れの終了やその後の利上げが後ずれするとの観測が広がりました。

ただ、金融当局者からは、「資産買入れを徐々に減らしていくことが妥当か議論する」(プラートECB理事)、「適度なインフレ率上昇の証拠が見られる場合、ECBは市場のコンセンサスよりも前に利上げを開始する可能性がある」(ハンソン・エストニア中銀総裁)、「金融市場参加者は資産買入れ策の年内終了を見込んでいるが、驚くには当たらない」(バイトマン・ドイツ連銀総裁)、「資産買入れの終了を近く発表することは妥当」(クノット・オランダ中銀総裁)など、緩和縮小に前向きな発言が目立っています。14日の理事会で、資産買入れの終了時期について示唆される可能性も出てきました。

南欧の政局不安が後退する中、ECBが金融緩和策の縮小に軸足を移すと、ユーロが強含み、昨年のように日本株を支えることが期待されます。

とはいえ、イタリア国債の信用力を表すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッド(デフォルト(債務不履行)に備えた保証コスト)の拡大は続いています(図表3)。イタリアの債務問題などへの警戒が浮上し、ユーロの上値を抑えることには、引き続き注意が必要です。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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