FRBが気にするイールドカーブのフラット化

2018/05/25 <>

▣ 2%を超える物価上昇を容認

米連邦準備制度理事会(FRB)は5月23日、1、2日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表しました。6月のFOMC(12、13日)での利上げについては、「大半の参加者は今後入手される情報で現在の経済見通しがおおむね確認されれば、金融緩和策を一段と解消するのが近く適切になると判断した」ことから、ほぼ確実な状況です。

また、「インフレ率が一時的に目標の2%をやや上回って推移するのは、FOMCの対称的な物価目標と整合的で、中長期的なインフレ期待を抑制する上で有益」とし、インフレ率が2%の物価目標を上回ることを容認する姿勢がみられました。FRBが利上げ判断で重視するエネルギーや食品を除いた個人消費支出物価指数(コアPCEデフレーター)は、前年同月比で1.9%と2%の物価目標に接近していますが、2%を上回ったからと言ってすぐに利上げペースを加速させることはなさそうです。

短期金融市場が織り込む年内の利上げ回数は、3月の利上げを含め3回と4回が拮抗していますが、今回の議事要旨を受け、3回の織り込みがやや優勢になりました。

とはいえ、年内の利上げ回数やその後の利上げペースについては、6月のFOMCで公表されるFOMCメンバーの政策金利見通しなどを待つ必要があります。

▣ フラット化の進行とリセッションまでの距離

他方、イールドカーブ(利回り曲線)のフラット化(平たん化)については、政策金利の緩やかな上昇を見込んでいること、タームプレミアムが長期金利の押し下げ圧力になっていることなど、いくつかの要因が指摘されました。

タームプレミアムは、償還までの期間の長い債券は短い債券に比べて流動性リスクや金利変動リスクが大きいため、リスクの分だけ要求される上乗せ利回りのこと。NY連銀などが推計していますが足元ではマイナスになっています(図表1)。

また議事要旨では、長短金利が逆転する逆イールド(右肩下がりの利回り曲線)については、リセッション(景気後退)が迫っている予兆となってきたことから、注視していくことが重要との意見も出されました(図表2)。

利上げ局面開始以降の、イールドカーブの動きを大ざっぱに局面分けすると、

  1. 期間が短い金利が主導して上昇していくため、イールドカーブのベア・フラット化(利回り上昇・平たん化)が進行
  2. 政策金利ピーク(利上げ終了)時には、政策金利の水準で長短金利はほぼ横並びに
  3. 将来的な景気鈍化、リセッション時の利下げを織り込み、逆イールドに
  4. 景気鈍化やリセッションを受け、金融緩和(利下げ)局面となり、期間が短い金利が主導して低下していくため、イールドカーブはブル・スティープ化(利回り低下・急こう配化)

現時点はまだ①の段階。各利回り(2年債、5年債、10年債、30年債等)は政策金利を0.75%~1.4%上回っており、まだ政策金利とかい離している状態です(図表3)。政策金利がこれらの利回りに追いつくのにはもう少し時間がかかるとみられ、逆イールドや、その先の景気鈍化もしくはリセッションはさらに先となりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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