ボラティリティが株安を増幅
▣ 低ボラティリティ、株高が反転
NYダウ(ダウ工業株30種平均)は2月8日、米暫定予算の期限切れを迎え、政府機関の閉鎖への懸念が広がったことや、米長期金利が上昇したことを受け、2月5日に続き、前日比1,000ドル超下落しました(図表1)。米長期金利の指標である10年国債利回りは、英中央銀行のイングランド銀行が早期利上げを示唆したことに加え、米国の財政悪化懸念やインフレ懸念を背景に一時2.88%と、5日に付けた約4年ぶりの高水準に並びました。その後、米長期金利は2.83%程度まで低下しましたが、米国株は下げ止まらず、値を下げる動きが続きました。また、7日には一旦30を下回った恐怖指数と呼ばれるVIX(ビックス)指数が再び、33.46まで上昇しました。
VIX指数とは、市場が織り込む今後予想されるボラティリティ(変動の大きさ、変動性)を指数化したもの。平時には10~20で推移し、20を超えてくると市場の不安感が強まっているとの見方ができます。
2017年は低いボラティリティが続き、安心して米国株などに投資できる環境となったことが、米国株を押し上げた要因の一つに挙げられます(図表2、3)。リスクを限定するため、ボラティリティの水準をターゲットにした運用などでは、低ボラティリティを背景に米国株の比率を高め、株価を押し上げたとみられます。他方、ボラティリティの低下を見込んで、VIX指数が低下したら上昇するファンド(インバース上場取引型金融商品(ETP))などへの投資も膨らんだ模様です。
▣ ボラティリティの上昇が米株安を増幅
2017年後半から上昇スピードを加速させてきた米国株でしたが、2018年に入り、高値への警戒感が強まる中、米長期金利の上昇をきっかけに騰勢が一服しました。年初には10を下回っていたVIX指数も上昇に転じ、2月2日には17台まで上昇、翌営業日の5日にはザラ場で一時50台、引けでも37.32まで20ポイントも上昇しました。
ボラティリティが上昇したことで、ボラティリティを売り建てていたポジション(インバースETP)を解消する動き(ボラティリティの買い)が強まり、さらにボラティリティが上昇する展開になったことが、ボラティリティを急騰させました。他方、ボラティリティの上昇により、投資家のリスクを圧縮する(米国株を売って運用資産の価格変動リスク(ボラティリティ)を減らす)動きを強めたことで、米国株の下落を増幅させることになったとみられます。
▣ ボラティリティ急騰局面での米株
リーマンショック以降、VIX指数が30を超えた局面は、
(1)ギリシャの財務不安が高まった2010年(ギリシャ危機)
(2)S&Pが米国の格付けを引き下げたことに加え、欧州債務危機がイタリアなどの周縁国に 波及した2011年
(3)中国景気の減速懸念が強まり、世界的な株安が広がった2015年(チャイナショック)
これらの3局面でNYダウは、(1)の2010年は4月26日~7月2日までに13.6%下落、(2)の2011年は7月21日~8月10日までに15.8%下落、(3)の2015年は8月17日~25日までに10.7%下落しました。(2)の局面では、8月10日に一旦底を打ちましたが、10月初旬まで底這う展開が続きました。(1)~(3)のいずれも、VIX指数が20を下回る前に、米国株は底を打ちました。今回は、NYダウは1月26日~2月8日までで、既に10.4%下落しています。
(1)~(3)の局面では、株価が底打ちするまでの期間は1週間~2か月半。今回は、リスク選好や低ボラティリティに偏り過ぎていたポジション(持ち高)に修正が入ったことが、ボラティリティの上昇や株価の下落を増幅した可能性があります。ただ、これまでのところ米国の経済や企業業績は好調で、(1)~(3)の局面ほどの、世界の金融市場に大きな影響を与える事由があった訳ではなさそうです。
VIX指数の売建てのポジション解消が一巡し、米債券市場が落ち着いてくれば、米国株は底打ちを探ることになりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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