緩和マネー先細りも、企業業績が支え

2017/11/17 <>

▣ 緩和マネーの供給は先細り

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和政策(QE)で膨らんだバランスシート(米国債などの保有資産)の縮小に着手することを決めました。ただ、10月に入っても、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)などの保有資産の残高が維持されたままでしたが、最終週あたりから米国債の保有残高が若干ながら減少してきています。今後、緩やかに保有資産の縮小が進むとみられます。

2015年1月から規模を縮小し10月で終了したFRBの量的緩和第3弾(QE3)による市場への資金供給鈍化を補うように、2015年3月から国債の購入を開始した欧州中央銀行(ECB)も、月間の資産買入額を、4月には800億ユーロから600億ユーロに減額し、また来年1月からは300億ユーロに減額する予定(9月まで)です。日銀は、「イールドカーブ・コントロール」の下、巨額の長期国債を買い入れていますが、今後は日米欧の中央銀行による緩和マネーの供給が細っていくことになります。緩和マネーは内外の株価を大きく押し上げてきた要因の一つ。緩和マネーによる株価の押し上げ効果も弱まることが想定されます(図表1、2)。

▣ 欧米は金融相場から業績相場に、日本は金融相場+業績相場

もっとも、世界経済は緩やかながらも堅調に拡大している中、国内では上場企業の2018年3月期は3年ぶりに増収となり、純利益は2年連続で最高を更新する見通しです。欧米は金融緩和による金利低下や資金供給を背景に株価が押し上げられる“金融相場”から、企業業績の好転や拡大を背景に株価が上昇する“業績相場”に移行中。他方、国内は“金融相場”と“業績相場”が並行する環境が続くことから、国内株の地合いは悪くなさそうです。

11月9日には日経平均株価は、史上最高値からバブル後安値までの下げ幅の半値戻しの水準を上回り、一時1992年1月以来の2万3,000円台をつけました。次は節目の2万5,000円、91年高値の2万7,146円と、やや景気のいい数字が並びます。直近高値(日中のザラ場ベースでは2万3,382円、終値ベースでは2万2,937円)を抜いてくると、一段と上値を試す展開も想定されます。

▣ 国内株の出遅れ感は後退、今後は米株や業績にらみ

日経平均株価とNYダウは、ITバブル崩壊以降、追い越し、追い越されながら推移してきました(図表3)。足元では、9月中旬以降の急伸で、年明けからの出遅れをほぼ取り戻しており、国内株の出遅れ感からの急伸もほぼ一服したとみられます(図表4)。

因みに、来期のEPS(一株当たり利益)の伸びを5%、PER(株価収益率)を15倍とすると、日経平均株価は2万4,000円を超えてきます。2万7,000円となると、EPSの伸びが10%、PER16倍が必要になります(図表5)。

足元の国内株は、ドル円の動きより、米株の動きに反応しやすくなっています。投資家の不安心理を映す日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)は20ポイント前後まで上昇してきています。国内株は高値圏でやや不安定な動きになっていますが、落ち着きを取り戻した後は、為替の動きに加え、来期の企業業績や米株をにらみながら、上昇余地を探ることになりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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