ECBは慎重ながら緩和縮小の方向
▣ ECB理事会はタカ派ハト派の両面も、方向性は緩和縮小
欧州中央銀行(ECB)は6月8日の理事会で、政策金利を据え置くとともに、国債等を毎月購入する資産購入プログラムを12月まで継続する、現行の金融政策の維持を決めました。
今回の理事会の主なポイントは、
- 経済成長に対するリスクバランス・・・前回の下振れリスクの方が大きいとの判断から、今回は上振れと下振れでほぼ均衡しているとし、下振れリスクが後退
- 金融政策の方向性を示すフォワード・ガイダンス・・・「政策金利が長期にわたり、資産買入れプログラムの期限を十分に超えるまで、現在の水準か、それよりも低い水準に留まる」から、「政策金利が長期にわたり、資産買入れプログラムの期限を十分に超えるまで、現在の水準に留まる」に変更し、追加利下げの可能性が大きく後退
- 経済見通し・・・成長見通しを引き上げる一方、インフレ見通しを若干引き下げ(景気拡大はまだ、より力強いインフレ動向にはつながっていない)
ECBは今年4月から、国債などの資産の買入額を月800億ユーロから600億ユーロに減額しています。また、長期の資金供給(貸出条件付き長期リファイナンスオペ、TLTRO)を実施してきましたが、景気回復や企業向け融資が伸びていることから、3月で予定どおり打ち切りました。
さらに今回、追加利下げの可能性や経済成長の下振れリスクを後退させたことで、金融政策の方向性は非常に慎重ながら、緩和縮小の方向に向いてきていると言えそうです。
▣ 引き続きテーパリングの開始が焦点
もっとも、ECBが目標とする消費者物価上昇率(インフレ目標)「2%未満でその近辺」には程遠く、今回インフレ見通しを引き下げたことで、今後も長期にわたって緩和的な金融政策が続くことが改めて示されました(図表1)。低金利政策は当面続くとみられ、一時強まった市場の利上げ観測も大きく後退しています(図表2)。独金利などが抑制された状況が続くとみられます。ユーロについてもやや上値が重くなりそうです。
一方、資産購入プログラムについては、今年の12月まで継続するとしていますが、国債市場の機能低下、銀行の収益圧迫、国や企業の財務改革の停滞などの副作用も懸念されています。市場では9月の理事会で、テーパリング(買入額の段階的縮小)が検討されるとの見方が強まっています。来年以降のテーパリングの蓋然性が強まると、ユーロ圏の長期金利が跳ね上がる可能性もあります。引き続き、金融政策をめぐる思わくには注意が必要です。
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