不透明感の中での分散投資

2017/04/14 <>

▣ 2016年度は、2015年度と逆のパフォーマンス

期間の取り方によってパフォーマンスは変わりますが、年度で区切ると、2016年度は株高、債券安、リート安と、2015年度と逆のパフォーマンスとなりました(図表1)。

国内株については、リーマンショック後の2009年度以降、欧州危機などに振らされながらも、世界経済が持ち直す中、アベノミクスなどから堅調な動きが継続しました(図表2)。2015年度は中国経済の減速懸念から世界の株価が不安定になったチャイナショックなどの影響でマイナスのリターンとなったものの、2016年度はトランプ氏の登場が株価を押し上げました。2006年度以降、低いながらもプラスのリターンが継続していた国内債も、追加緩和期待が後退する中、昨年度はマイナスのリターンとなりました。Jリートは大きなリターンとなった年の翌年度や、2年続けてプラスとなった翌年度は利益確定売りに押され、やや軟調な動きになる傾向が続いた格好です。

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▣ 分散投資の安定性は継続

他方、各資産への分散投資のパフォーマンスをみると、単純に国内株、国内債、Jリートへ均等配分した3資産のパフォーマンスはサブプライム問題やリーマンショックで世界的な金融危機に陥った2007~2008年度を除き、プラスが継続しました。プラスのリターンが確約されるものではありませんが、単一の資産での運用と比較すると、より安定した運用になった格好です。

2資産を考えた場合には、債券と株式の組み合わせがリスク分散には効果的と言われますが、2010年度のように、債券は相対的にローリスク・ローリターンの資産のため、株価の下落を債券だけでは補えないことも想定されます。Jリートは、投資家のリスク選好が強まる局面では、株式と同様に買いが優勢になる傾向がある一方、金利が上昇(債券価格下落、利回り上昇)すると、その分配利回りの魅力が減退するなどから、上値が重くなるなど、株式や債券の双方の動きに影響を受けます。過去のパフォーマンスは株価が下落した年にはプラスのリターンとなるなど、株式の下落を補完する動きがみられました。株式・債券の組み合わせよりリスク(価格変動)は高いものの、やや長い目で見ると株式・Jリートの組み合わせも相性が良さそうです。

各年度のリスクとリターンを見ても、単一資産への投資より分散投資の方が安定した運用と言えそうです(図表3、4、5)。また、最大ドローダウン(期間中の最大の下落)についても抑制されることが見込まれます(図表6)。

経済協力開発機構(OECD)は4月13日、今年の日本の成長率を、消費支出、輸出、設備投資の拡大を見込み、1.0%から1.2%に上方修正しました。国内経済の底堅い推移が見込まれる中、ドル円が110円前後で推移するなら、今期についても堅調な企業業績が見込まれます。

とはいえ、トランプ政権の政策運営の不透明感に加え、フランス大統領選を前に欧州政局も予断を許さない状況になっています。また、シリアや北朝鮮の地政学リスクへの警戒がにわかに強まっています。単一資産だけでなく、資産分散についても意識したいこところです。

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