米利上げ見通しを上方修正

2017/03/03 <>

▣ 年内3回の利上げ観測が急浮上

年内3回の利上げに意欲を見せていた米連邦準備制度理事会(FRB)ですが、インフレリスクが高まっていないとの認識やトランプ新政権の政策運営の不透明感などを背景に、3月の利上げは無理との見方が市場で広がっていたものの、2月28日のニューヨーク連銀のダドリー総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁の発言を契機に、3月の利上げ観測が急浮上しています。

ウィリアムズ総裁は以前から3月の利上げを支持する発言をしていましたが、イエレン議長、フィッシャー副議長と並んで影響力のあるダドリー総裁が、比較的近い早期の利上げが適切との考えを示したことで、FRBが3月の利上げを真剣に検討しているとの見方が強まりました。

その後も、利上げに最も慎重とみられていたFRBのブレイナード理事が、利上げは「すぐに適切になりそうだ」と発言、他の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーも、早期利上げに前向きな発言を繰り返しており、3月に利上げを決定しても市場にサプライズを与えないように配慮している模様です。

▣ 利上げが後手に回ることを警戒か

3月1日に公表されたFRBがインフレ指標として注目する米個人消費支出(PCE)デフレーターの上昇率は、1月に前年同月比1.9%と前月1.6%から急速に高まりました。食品とエネルギーを除くコア指数については前年同月比1.7%の上昇でしたが、前月比では0.3%上昇とやや加速しました。FRBは、労働市場が完全雇用に近づく中、金融政策が後手に回ること(利上げが遅くなり、景気過熱やインフレ圧力の抑制が困難になること)を警戒しているとみられます。

CMEグループのFedWatchによると、3月2日時点での3月の利上げ確率は75%、ブルームバーグの予想確率は90%に跳ね上がっており、ほぼ3月の利上げを織り込んだ状況です(図表1)。2月24日に2.31%まで低下した米長期金利は、3月2日には一時2.5%まで上昇、112円前後で推移していたドル円も、114円半ばまで上昇しました(図表2)。

これまで年内は6月、12月の2回の利上げがメインシナリオと考えていましたが、3月に追加利上げに踏み切ると、年内の利上げは3回の可能性が高くなります。市場が織り込む年内の利上げ回数も、前週末の年2~2.5回から、直近では2.5~3回に引き上がってきています。

▣ 今後の利上げシナリオ

今後の利上げについては、

  • メインシナリオ:年内3回の利上げ(3月に利上げした後、利上げの影響、トランプ政権の政策運営、フランス大統領選の結果などを見極め、9月、12月に追加利上げに踏み切る)
  • 上振れシナリオ:年内4回の利上げ(3月に利上げした後、米経済が堅調に推移する中、トランプ政権の政策運営の不透明感が払しょくされ、フランス大統領選で中道派の候補が勝利するなど、内外の懸念材料が後退し、6月、9月、12月に利上げ)
  • 下振れシナリオ:年内2回の利上げ(雇用統計が予想を大きく下回る結果になる、トランプ政権の政策運営への懸念が強まるなどで、3月利上げが一旦見送られる)

などが考えられます。

3月3日のイエレン議長、フィッシャー副議長で、3月利上げが示唆されると、駄目押しとなりそうです。この場合、市場は米金利上昇、ドル高で反応することも想定されますが、市場は3月の利上げを大方織り込んでいることから、反応は一時的で、その後は10日の米雇用統計、14-15日のFOMC待ちとなりそうです。

20170303

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