メンバー入れ替え後の米利上げペースは
▣ 今年のFOMCはタカ派色が後退
2017年1月の米公開市場委員会(FOMC、1/31-2/1)から、投票権を持つメンバーが4名入れ替わります。
FOMCは、米連邦準備制度理事会(FRB)が開催し金融政策を決定する委員会。投票権を持つFOMCメンバーは、常任がFRBの執行部(理事)7名(現在は2名欠員で5名)とニューヨーク連銀総裁、残り4枠がニューヨーク連銀を除く11地区の連銀総裁の輪番制となります。他の連銀総裁はFOMCには参加できますが、投票権はありません。
2016年のメンバーである、利上げに積極的なタカ派もしくはタカ派寄りとされるボストン連銀のローゼングレン総裁、カンザスシティ連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、また2019年までの利上げ見通しを1回としているセントルイス連銀のブラード総裁に替わり、2017年は利上げに慎重なハト派とされるシカゴ連銀のエバンス総裁、中道派のダラス連銀のカプラン総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が投票権を持ちます(図表1)。
ハーカー総裁はややタカ派寄りと見られていますが、昨年の9月に利上げを主張した、ローゼングレン総裁、ジョージ総裁、メスター総裁と比べると中道派に近いとみられ、2017年のFOMCは、タカ派色が薄まった格好です。
▣ 今年の利上げ回数は
今年の利上げ回数は、昨年12月の政策金利見通し(17名のメンバー全体)では1回~6回で、中央値は3回。このうち、常任のイエレン議長、フィッシャー副議長、3名の理事、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の6名では、1回の利上げが1名、2回が2名、3回が3名程度とみられ、2.5回の利上げが中央値。
他の4名の投票権を持つメンバーの政策金利見通しは、ハト派のエバンス総裁は2回、中道派のカプラン総裁は3回と発言、カシュカリ総裁は3回もしくは4回程度とみられます。タカ派寄りとされるハーカー総裁も「3回の利上げを予測している」と述べており、4名の中央値は3回の利上げとみられます。
したがって、10名の投票権を持つメンバーの利上げ見通しは2回~3回となり、今年のFOMCの利上げ見通しは市場の織り込みと大きなかい離はなさそうです。
1月20日にトランプ氏が米大統領に就任します。昨年12月にFRBは利上げを決定するとともに、トランプ氏の財政政策を若干考慮して政策金利見通しを引き上げました。同氏は、11日の記者会見では景気刺激策などへの具体的な言及はなく、市場にはやや失望感が広がりました。今後は、就任以降の政策運営を確認しながらとなりますが、経済成長やインフレへの影響が顕在化するのは年の半ば以降となり、3月には利上げに踏み切れない可能性が高いとみられます。2018年も3回の利上げ見通しであり、今年6月以降で政策金利を3回引き上げると、2018年より利上げペースを速めることになります。トランプ次期政権の政策次第ですが、今年は2回の利上げがメインシナリオになりそうです。
因みに、イエレン議長の任期は2018年2月3日まで。ブルームバーグによると、次期FRB議長の有力候補に挙がっている米コロンビア大学のグレン・ハバード経営大学院学長とスタンフォード大学のジョン・テーラー教授、同大学経営大学院講師を務めるケビン・ウォーシュ氏らは、金融政策をさらに引き締める考えを示しています。今年の後半には、2018年の利上げのペースに関心が移ることになりそうです。
▣ 資産規模縮小の議論も要注意
また、FRBは現在、保有する政府機関債と住宅ローン担保証券(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資して、資産規模(保有債券の残高)を維持しています。
カプラン総裁は12日、保有資産の規模縮小について、少なくともわれわれの行動計画がどうあるべきかの討議や議論を今年始めることは合理的と述べました。今年中に資産規模の縮小に至ることはないだろうとの見方も示しましたが、債券の償還金(元本)の再投資を取りやめる、もしくは保有債券を売却することで、リスク資産を支える緩和マネーが縮小することや、債券売却で米金利が上昇することへの警戒感が広がることにも注意する必要がありそうです。
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