ECBは非常に緩やかなテーパリングを開始
▣ 債券買入規模を縮小+買入期間を延長
欧州中央銀行(ECB)は12月8日の理事会で、量的緩和政策である資産購入プログラム(APP)の下、月額800億ユーロとしている債券買い入れの規模を来年4月から月額600億ユーロに縮小することを決定しました(図表1)。債券買い入れの期限は来年末までとし、9か月延長しました。
月々の買入規模を減額したことからテーパリング(資産購入の段階的縮小)との見方もできるものの、ドラギECB総裁は、金融緩和の縮小ではなく現行プログラムの延長と捉えるべきで、見通しが悪化した場合などには規模の増額や延期がありうるとの見解を示しました。
▣ ECBの債券購入は細く長く
今回の決定は、デフレリスクが脱却の方向に傾いていることが理由の一つ。もっとも、あわせて公表されたユーロ圏の経済見通しでは、2017年のインフレ率について9月の見通しと比べ0.1ポイント引き上げた一方、2018年については0.1ポイント引き下げました(図表2)。2019年のインフレ見通しは1.7%と2%弱の物価目標に届かない見通しになっています。ユーロ圏の緩やかな景気回復や原油価格の持ち直しなどから、ECBの追加緩和観測は大きく後退していますが、緩和政策は長丁場になることが見込まれます。
また、ECBは国債などの公的セクターの買入対象の残存償還期限の下限を2年から1年に引き下げました(上限は30年のまま)。さらに、利回りが中銀預金金利(現在マイナス0.40%)を下回る国債は買入対象外としていましたが、必要な範囲で認めるとし、買入対象を拡大しました。
▣ 金利上昇圧力にはやや注意
2014年の米国のテーパリングでは、米連邦準備制度理事会(FRB)は2014年1月から量的緩和第3弾(QE3、月850億ドルの債券購入)を会合毎に縮小していき、同年の10月に終了させました。ECBの今回の決定は、米国のような明確なテーパリングではなさそうです。
ECBは今回決定した政策を当面維持することが見込まれますが、来年半ばになると2018年以降の金融政策に関心が集まりそうです。
ECBの決定を受け、緩和政策継続を好感する形で欧州株は上昇、独国債については、買入対象の下限の年限が引き下げられたことから、年限の短い国債の利回りは低下、長めの国債の利回りは、買入規模の縮小を反映して小幅に上昇する動きになりました。ユーロについては、量的緩和政策終了への警戒が後退し、売りが優勢に。ただ、どの市場も反応は限定的で、ECBの思わくどおりの動きになった格好です。
もっとも、欧米ともに金利は上方向が意識されるため、欧米の国債市場が不安定になると、日本の債券市場が不安定になり、長めの金利を中心に上昇余地を試す動きになることには注意が必要です。
巨額の債券の買入れが限界に近づく中、買入対象を拡大し、買入規模を縮小することで、細く長く量的緩和政策を継続する下地を整えた格好です。
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