生保の下期の運用計画
国内主要生保の2016年度下期の運用計画が出そろいました(図表1)。下期も上期と同様、外国債券中心に資産を積み増す方針のようです。
国内債券の上期の運用は、残高を減らす生保が多かったものの、残高を減らした生保でも、ある程度の利回りが見込める社債といったクレジット物などへの投資については増やすところが多かった模様です。下期についても、基本的には上期の運用を踏襲する方針のようです。国内債券については、マイナス利回りの国債は投資対象にはならず、超長期国債の利回りも低いため、国債の償還分などについても外債などに振り向けるとする生保と、超長期国債への投資を検討している生保に分かれます。
日銀がイールドカーブ・コントロール※を導入したことで、イールドカーブ(利回り曲線)の変動性が小さくなり、より安定することが見込まれます。イールドカーブが動かないことを前提に今後1年間の運用を考えた場合には、たとえば新発20年国債の利回りは、時間経過とともに水準が低い残存期間19年の国債利回りに向かって低下することになり、その利回り低下の分だけ価格が押し上げられるローリング効果を見込むことができます。イールドカーブが右肩上がり(年限が長ければ利回りも高い)で安定していれば、ローリング効果により運用利回りの押し上げが期待できます。
国内のイールドカーブは、日銀のイールドカーブ・コントロールの下で、居所を探っている状況ですが、もう少し高い利回り水準で居所が定まると、超長期国債への投資が広がる可能性もありそうです。
外債への投資については引き続き拡大する方針が大勢。為替リスクを回避(ヘッジ)したヘッジ外債、為替ヘッジしないオープン外債のどちらに重きを置くかについてはまちまちです。また、社債などへの投資も検討している模様です。ヘッジするかしないかは為替次第としながらも、ヘッジコスト(ドル調達コスト)が高いこと、円高の動きが一服し、米国の利上げ観測からドル円が持ち直していることなどから、オープン外債への投資がしやすい環境が整ってきていると考えられます。
国内株式への投資については、横ばいとする生保が多い一方、企業業績の回復期待に加え、日銀の上場投資信託(ETF)買入れで下値が支えられるとして、増加させる生保も見受けられます。国内株式については、おおむねネガティブな見方はみられません。
下期は、米大統領選、英国の欧州連合(EU)離脱、米国の年内の利上げ、来年の米利上げペースなどは波乱材料で、為替については機動的な運用が求められそうです。
また、プライベートエクイティ(未上場企業の株式)で新規分野へ投資、外債でもスプレッドの獲得が期待できる外国社債や地方債を検討、欧州債でもスプレッドの取れる周辺国の国債に投資するなど、低金利下での運用利回り確保に苦心している姿が窺えます。
他方、下期の相場見通しについては、国内の長期金利は4月時点と比べレンジの幅を狭くしています(図表2)。日銀が9月にイールドカーブ・コントロールを導入したことが背景とみられます。米長期金利については、緩やかな米利上げ観測を背景に、水準を下方修正しています。国内株式については、ドル円の見通しを大幅に引き下げたのに対し、横ばいもしくは若干の引き下げにとどまっています。日銀のETF買入れが、国内株を下支えするとの見方のようです。
※長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
金融市場調節方針は、長短金利の操作についての方針を示すこととし、短期金利については、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。長期金利については、10 年物国債金利がおおむね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う。
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