生産調整期待で原油価格持ち直し

2016/10/14 <>

▣ 生産調整なら供給超過解消へ

石油輸出国機構(OPEC)が9月28日の非公式会合で8年ぶりの減産の枠組みで合意したことに加え、ロシアも生産調整に前向きな姿勢を示したことを背景に、NY原油は10月6日に、6月以降で初めて1バレル=50ドル台に乗せました(図表1)。

OPECは原油生産を日量3,250万-3,300万バレルのレンジまで減らすことで合意したと報じられています。国際エネルギー機関(IEA)によれば、OPECの9月産油量は日量3,364万バレルで、これまでの最高。3,250万-3,300万バレルであれば、減産になります。生産が騒乱や制裁措置によって抑制されてきたリビア、ナイジェリア、イランは減産を免除される見通し。その分、他国が減産を負担することになります。

IEAは先月、供給過剰が2017年後半も持続するとの見通しを示していましたが、今回の合意を受け、石油市場の需給はこれまで見込まれていたよりも早く均衡する(供給過剰が解消する)と指摘しました(図表2)。

OPEC加盟国とロシアなど非加盟国は10月12日、トルコのイスタンブールで会合を開きましたが、減産の配分については対立が強まっている模様です。今後、OPEC加盟各国の生産目標設定に向け委員会が設置され、ウィーンで28、29日に会合が開かれる予定になっています。ロシアだけでなく、世界最大の産油国である米国も招待されると伝えられています。11月30日のウィーンでの総会までに、非加盟国を含めて生産調整の詳細を詰めていくとみられます。

最終合意に至れば、産油国経済への懸念も後退し、投資家心理も上向きそうです。

▣ 原油高で緩和圧力は一服か

これまで、“エネルギー価格の下落”が、低インフレの主因として挙げられてきました。日銀の展望レポート(7月)では、「原油価格(ドバイ)については、1バレル45 ドルを出発点に、見通し期間の終盤である2018 年度にかけて50 ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している」とし、来年度には消費者物価指数(除く生鮮食品、前年比)が1.7%まで上昇する見通しになっています。日銀の見通しのようには上昇しないまでも、産油国が協調して生産調整に踏み切った場合には、マイナス圏で推移する消費者物価指数(除く生鮮食品を除く、前年比)も、プラス圏に浮上してくることが想定されます。産油国の生産調整の可能性が高くなれば、日銀の追加緩和への圧力も若干後退しそうです(図表3)。

原油価格の上昇に加え、一時99円程度まで下落したドル円が底打ちしてきていることも、インフレ率を押し上げそうです。しばらくは夏場までの円高による物価下押しは続きそうですが、緩やかなドル高・円安が進行していけば、来年には円高によるインフレ率の下押し圧力が和らぐことが見込まれます。金融市場が織り込む期待インフレ率も、消費者物価指数(除く生鮮食品、前年比)に先んじて、下げ止まってきています(図表4)。

もっとも、原油価格の上昇で、原油安で減少している米国の産出量が持ち直すことが見込まれます。IEAの事務局長はインタビューで、原油価格が1バレル=60ドルに達すれば、北米の原油生産が力強く増加するきっかけになる可能性は高いとの見方を示しています。

今後は、産油国の生産調整の協議を確認していく必要がありますが、減産もしくは増産凍結が開始された場合でも、原油価格は1バレル=50ドル半ばからは上値が重くなることも想定されます

20161014

 

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