ECBのテーパリング観測が浮上

2016/10/06

▣ テーパリング観測が浮上

日銀がテーパリング(量的緩和の縮小)を開始したかどうかは判断が分かれるところですが、10月4日の欧州市場でも、欧州中央銀行(ECB)によるテーパリングの可能性が報じられ、欧州債利回りが上昇(図表1)、5日には国内債も超長期債を中心に利回りが上昇しました。

報道によると、ECBは国債などを毎月800億ユーロ買い入れる量的緩和プログラムについて、段階的に買入規模を減らしていくテーパリングの必要性でコンセンサスが形成されつつあるとしています。

ECBは2015年3月に国債買入れを開始しました。このときの国債の買入期限は“2016年9月”まで。その後、2016年9月まで9か月残っている2015年12月に、買入期限を“2017年3月”に延期しました。買入期限まで6か月に迫った先月9月に、量的緩和の延長を見送ったのは、テーパリングを検討していたからとの見方もできるかもしれません。

とはいえ、段階的な規模の縮小になるのか、減額するとともに期限を延長するのか、それともテーパリングではなく単なる期限の延長になるのか、米国の量的緩和第1弾(QE1)、QE2のように一旦終了するのかは不透明な状況です。

ただ、テーパリングをあらかじめ市場に織り込ませることができれば、実際の決定時のネガティブなショックを緩和できる可能性もありそうです。この際には少なくとも、買い入れた国債の残高は維持すること、低金利政策を継続すること、必要であれば量的緩和を再び実施することを表明することは必要と思われます。

▣ 米国のテーパリング

米国では2013年5月に、QE3のテーパリングの可能性が示唆されたことを受け、1.6%程度であった米長期金利は急上昇し、9月上旬には3%をつけました(図表2)。10月には2.5%程度まで低下しましたが、テーパリングが決定された12月には再び3%まで上昇しました。もっとも、2014年1月にテーパリングが開始(債券購入を月間850億ドルから750億ドルに減額)された後、段階的に買入額が減額され、10月に債券買入が終了するまで米長期金利は低下傾向が続きました。テーパリング開始は市場にショックを与え、金利上昇で反応することが想定されますが、緩和政策が継続する中、市場が落ち着きを取り戻せば、利回りが上昇した欧州債を買う動きが強まることも想定されます。

▣ 日銀にとっては

ユーロ圏だけでなく日本についても、中央銀行が買い入れることができる国債には限度があります。

日銀は金融調節の操作目標を量から金利に変更しましたが、国債の買入規模は維持するとしています。ただ、国債買入れは保有残高の積み上げを目的とするのではなく、適切なイールドカーブを維持する手段であり、買入額はそのための必要額にとどめるような運営に移っていくことが、日銀にとっては望ましいのかもしれません。

日銀がテーパリングを開始した場合には、指値で国債を買い入れる指値オペを導入したことから、長期金利の急上昇は抑制できるとみられます。ただ、円の上昇は覚悟しなくてはなりません。もっとも、ECBが先んじて国債などの買入縮小を開始すると、市場に心構えができるため、日銀が追随しやすくなる可能性が出てきます。また、米国で利上げが再開されると、ドル高地合いとなり、円の上昇が抑制されることも想定されます。

ECBのテーパリング開始、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ再開が、限界に近いとみられる日銀の政策運営の救いになるかもしれません。次回のECB理事会(10月20日)が注目されます。

20161006

 

 

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