長期金利の上昇を抑制 ~ 自然利子率(中立金利)~

2016/09/09 <>

米長期金利は、早期利上げ観測の後退もあり、1.5%台を中心にした落ち着いた動きになっています。仮に、利上げが再開された場合でも、自然利子率の低下(潜在成長率の低下)から米長期金利の上昇は抑制されるとみられます。

また、日本の長期金利についてもやや上昇気味ですが、自然利子率の低下に加え、米利長期金利の落ち着いた動きから、上昇余地も限定的とみられます。

▣ 自然利子率の低下で、米金利の上昇も限定的

自然利子率とは、経済を冷やさず過熱もさせない、景気や物価に中立的な金利水準(経済の需要と供給が均衡状態にある場合の実質金利)のこと。中立利子率(金利)、均衡実質金利とも呼ばれます。インフレを考慮した実質利子率であり、中期的には潜在成長率と同水準になるとされています。

長期的な政策金利の均衡水準は、“自然利子率(中立金利)+インフレ目標値”と考えられています。自然利子率の水準が低ければ、政策金利の均衡水準も低くなり、政策金利の上昇余地も限られることになります。

米国の長期的な政策金利の均衡水準の目安は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利見通し(ドットチャート)の中で示されている長期見通しです。6月時点の長期見通しは3%で、インフレ目標の2%を差し引いた実質では1%。この1%がFOMCが想定する自然利子率ということになります。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル理事は、米経済成長や潜在成長率が長期的に低い水準にとどまることに懸念を強めており、長期的な政策金利の水準は長期見通しである3%より、もっと低い可能性があると述べています。

米サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が、計測・公表している米国の自然利子率は、0%程度まで低下しています(図表1)。FRBが利上げを再開しても、そのペースは非常に緩やかで、ピークの水準についても3%には届かないとの見方ができそうです。利上げがピークの局面では、政策金利と長期金利(10年債利回り)はほぼ同水準(図表2)なので、利上げ再開後の米長期金利はピーク時でも3%までは届かず、2%程度にとどまる可能性もあります。

米金利の上昇が限定的であれば、米金利に連動しやすい日本の長期金利の上昇も抑制されることになりそうです。

20160909

 

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