株式市場も日銀依存
▣ 日銀は買入規模を倍増
8月18日の株式市場は、TOPIXが前場に0.38%下落したにもかかわらず、日銀のETF(指数連動型上場投資信託※)買いが入らないとの観測から後場に大きく下落しました。図らずも、市場の日銀のETF買いへの期待が大きいことを示すことになりました。
日銀は7月末にETFの買入れを年3.3兆円から6兆円に倍増することを決定しました。8月に入り、2日、3日は347億円のETF買入れだったものの、4日、10日には倍増の707億円を買い入れました(図表1)。
日銀は前場にTOPIXが下落した場合にETF買いを実施するとみられています。買入れが実施された2日、3日、4日、10日の前場のTOPIXは、それぞれ0.78%、1.39%、0.24%、0.41%の下落でした。15日は前場に0.17%下落しましたが、日銀のETF買いが入らなかったことから、“前場に0.2%以上下落したら日銀がETF買いを実施する(0.2%ルール)”との見方が広がっていました。
▣ 日銀は売らない巨額の投資家
これまで日銀は、マネタリーベースの拡大や資産買入れの拡大など、量と質を拡大してきましたが、今回はETF買入額の倍増のみの決定でした。量の拡大がなかったことや金利低下の打ち止め感が広がったことに加え、米国の利上げ観測の後退から、ドル円が一時100円を割り込むなどドル安・円高気味の動きになっていますが、株価の下落は限定的。日銀のETF買いへの期待や実際の買入れが株価を支えている格好です(図表2)。
今後、日銀は月5,000億円ペースでETFを買い入れることになります。主要な投資家である海外投資家の月間の買い越し、売り越し規模の平均(売買差引の絶対値の平均)は2012年以降で7,737億円、個人投資家は5,563億円(図表3)。海外投資家や個人投資家に近い規模で、売ることなく買い入れることから、株式市場への日銀の影響は強力です。
16日にはTOPIXが前場に0.05%の下落にとどまったことから、日銀のETF買いが入らないとみて円買い・株売りが仕掛けられた可能性が指摘されました。18日には“0.2%ルール”が適用されなかったことから、失望売りが広がりましたが、日銀が買いを入れるトリガーが不透明になったことで、日銀の買いの有無を見越した仕掛け的な動きはやりにくくなったとみられます。
18日にはETF買いが見送られましたが、株価下落時の日銀による巨額の買入れは安心材料です。ただ、過度な期待からの失望売りには注意が必要です。国債市場と同様に、株式市場も日銀依存が強まっています。
※設備・人材投資企業を支援する指数連動型上場投資信託(ETF)を除く
(注)日銀の指数連動型上場投資信託(ETF)の買入れは、日銀の保有残高が、年間約6兆円に相当するペースで増加するよう行う。対象は指数連動型上場投資信託(ETF)であって、東証株価指数(TOPIX)または、日経平均株価(日経225)またはJPX日経インデックス400(JPX日経400)に連動するよう運用されるもの。また2016年4月から、設備・人材投資企業を支援する指数連動型上場投資信託(ETF)を年間約3,000億円の枠を設け、ほぼ毎営業日12億円の買入れが実施されている。この3,000億円はETF全体の買入れ額の6兆円に含まれる。
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