日銀は株に優しく、債券に厳しく
▣ ETF買入れ、ドル供給を倍増
日銀は、7月28、29日の金融政策決定会合で、追加緩和を決めました。上場投資信託(ETF)の購入額を現行の年3.3兆円から6兆円に増やし、企業の海外展開を支援するための米ドル資金の供給を総枠120億ドルから240億ドルに倍増しました。
ただ、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の「量」、「質」、「金利」の内、質の一部を増やしただけで、「量」であるマネタリーベース、その他の「質」である長期国債やJリート、「金利」である政策金利(日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用)は現状維持としました。また、物価目標の達成時期についても“2017年度中”とし、4月の見通しを維持しました。
この決定を受け、月末の金融市場は乱高下したものの、結局、国内株は上昇する一方、ドル円は103円半ばに下落、長期金利はマイナス0.2%台からマイナス0.1%台に上昇しました(図表1~3)。東証REIT指数については一時大きく下落したものの、引けにかけて下げ幅を縮小する動きになりました(図表4)。
▣ 株に優しく、債券に厳しく
今回の決定から窺えるのは、
- これ以上の金利水準の低下、イールドカーブのフラット化(平坦化)は望まず
- ただ、金利低下の打ち止め感から円高が進行する可能性があるが、円高に伴う株安はくい止めたい
という日銀の姿勢。
また、金融市場への影響については、
- 国内株については、ETF買入増額、大型の経済対策が押し上げるものの、円高が重し
- ドル円は、マネタリーベースやマイナス金利の拡大が見送られ、長期金利も上昇圧力が強まることから、円高地合い。ただ、株価が堅調な動きになると、逃避通貨である円を売る動きが出てくる可能性
- 長期金利については、追加緩和期待を背景に低下していたので、その巻き戻しが入る可能性
- Jリートについては、長期金利が上昇しているものの、まだマイナス圏と低水準にあること、また日銀の追加緩和期待は残ることなどから、下押しも限定的
などが挙げられます。
もっとも、黒田総裁は、マイナス金利と量的緩和の拡大に限界はきていないとの強気の姿勢を見せています。日銀の金融政策だけでなく、年内の利上げの可能性が残る米金融政策や、過去最高値圏で推移する米株式市場の動きなども確認しながら、国内株、ドル円、Jリートについては方向感を、長期金利については居所を探ることになります。
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