予想外のEU離脱

2016/06/24 <>

▣ 英国はEU離脱を選択

英国の欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票が6月23日に実施され、離脱派が勝利しました(離脱51.89%、残留48.11%)。

この国民投票の開票状況や結果を受け、24日(日本時間)の金融市場は大荒れの動きになりました(図表1~4)。英ポンドは対ドルで約30年ぶりの安値まで下落しました。また、リスク回避から逃避通貨である円を買う動きが強まり、ドル円は一時2013年11月以来の100円割れ、日経平均株価も1万5,000円を下回りました。昼過ぎには日経平均先物に、サーキットブレーカーが発動されました。長期金利(新発10年国債利回り)についても、一時マイナス0.215%と過去最低を更新しました。東証REIT指数は、長期金利の低下が支えとなってか、国内株ほどではなかったものの、1,732ポイントまで下落しました。

今後、英国は離脱の手続きに入ることになります。キャメロン首相は離脱派が勝利した場合、すぐに欧州理事会に通告する意向を示しています。EUの基本条約であるリスボン条約の第50条に基づいて、通告後に欧州理事会と脱退に関する協定を結ぶための交渉に入り、EUの将来の関係についての脱退協定を締結するとみられます。脱退協定を結べなかった場合、離脱の通告から2年でEU法は効力を失うとされています。

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▣ 政府・中央銀行の対応待ち

今後は、スコットランドの独立運動、他のEU加盟国への離脱の動きの波及など政治的な動きも警戒する必要がありますが、経済面での悪影響も懸念されます。

国際通貨基金(IMF)は、英国が離脱後の交渉でEU市場へのアクセスを一定程度確保したシナリオ(“限定的シナリオ”)、英国が当面の間はEUと新たな経済協定を結べないと想定したシナリオ(“逆境シナリオ”)に分けて、英国経済への影響を試算しています。“限定的シナリオ”では、2019年までに残留した場合に比べ、英国の国内総生産(GDP)が1.4%程度縮小、他方、“逆境シナリオ”では、5%以上縮小するとの試算を示しています(図表5、6)。またIMFは、英国以外のEU加盟国のGDPが2018年に0.2~0.5%押し下げられるとしています。加えて、英国のEU離脱を受けた内外金融市場の混乱が、実体経済に及ぼす悪影響も無視できません。

主要国の中央銀行は、2008年のリーマンショック時のように信用収縮で資金の流動性が枯渇することのないよう、イングランド銀行(英中銀)と連携し、金融市場への流動性支援を打ち出すことが見込まれます。また、英ポンドを支えるため協調介入に踏み切ると、リスクオフ(回避)が一服する可能性があります。

麻生財務相は「世界経済、金融・為替市場に与えるリスクを極めて憂慮している」、「為替市場の動向を緊張感を持ってこれまで以上に注視し、必要な時にはしっかりと対応する」と、黒田日銀総裁は「国民投票の結果が国際金融市場に与える影響を注視する」と、相次いで声明を発表しました。ひとまず、各国政府・中央銀行の対応を待つことになります。

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