公的年金は引き続き下支え役

2016/03/03 <>

1.公的年金の 10~12月期の運用状況

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が3月1日に、2015年10~12月期の運用状況を発表しました。10~12月期の収益は4兆7,302億円の黒字となり、7~9月期の7兆8,899億円の赤字を埋めるには至らなかったものの、ある程度挽回した格好です。積立金全体の構成割合は、国内債券は37.76%、国内株式は23.35%、外国債券は13.50%、外国株式は22.82%と、基本ポートフォリオ(国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%)に近づきました(図表1)。

もっとも、年明け以降は世界的な金融市場の混乱を背景に、GPIFの運用は低迷しているとみられます。3月に入りやや戻しているものの、今年1月から直近(3月2日)までの収益を売買などがない前提で試算すると、国内債券は日銀のマイナス金利導入が追い風になり、1.7兆円程度の黒字ですが、国内株式、外国証券の収益は赤字となり、全体では6兆円程度の赤字と苦しい状況です。

2.日経平均株価が1万6,000円割れると買い出動?

因みに、直近の資産構成割合の試算値は、国内債券40.7%、国内株式21.3%、外国債券13.6%、外国株式21.8%と基本ポートフォリオとの乖離が広がっていますから、今後は国内債券については売却、国内株式については買い増す動きが強まることも想定されます(図表2)。

年金資金が経由する信託銀行の株式売買動向をみると、株式市場が軟調な動きとなった昨年12月以降は買い越しが継続しています。また、日経平均株価が1万5,000円を割り込んだ2月12日の翌週(2月第3週)には4,999億円買い越しと、1982年7月の統計公表以来、最大の買越額となりました(図表3)。2月第4週も、信託銀行の買いは高水準。日経平均株価1万6,000円割れの水準では、年金資金が買い出動との声も聞こえます。

国内債券については売りが強まる可能性がありますが、日銀の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策の下、良好な需給が継続しており、市場への影響は限定的。他方、国内株式については構成割合が25%を下回っている限り、株式相場の下支え役が期待できそうです。

20160303

 

 

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