一段の利下げを織り込む

2016/02/19

1.適用対象が一部とはいえ、マイナスの付利が短期金利の基準

金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用する運用が、2月16日から開始されました。金融機関同士が資金を貸し借りする短期金融市場では、無担保コール翌日物金利は、16日にはなんとか0%でとどまったものの、17日には10年ぶりのマイナスをつけました(図表1)。

日銀は当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用するとしています。マイナス金利の適用については、昨年1年間の当座預金の平均残高である“基礎残高”、およびゼロ金利が適用される“マクロ加算残高”を超える部分の“政策金利残高”に対し、▲0.1%が課され、日銀の試算では適用当初は10兆円程度としています。日銀は金融機関に資金供給することで、マネタリーベース(≒当座預金残高)を年80兆円のペースで増やすことを金融市場調節方針としていますので、今後はさらに当座預金が積み上がることになります。ただ、積み上がった部分に関しては “マクロ加算残高”の枠が3か月の頻度で拡大されるのに合わせ、この枠に組み入れられることから、ゼロ金利が適用されることになります。よって、3か月で当座預金が20兆円程度増えることが想定されることから、日銀はマイナス金利の適用は当座預金の一部の10兆円~30兆円程度に限られるとしています(図表2)。

同じく階層構造を採用しているスイス国立銀行(中央銀行)は、市中銀行が同中銀に預ける当座預金について、1,000万スイスフランを上回る部分にマイナスの預金金利(現在▲0.75%)を適用しています(図表3)。

2014年12月18日のマイナス金利導入前までは、スイスの短期金利は政策金利であるスイスフラン建てロンドン銀行間取引金利(LIBOR)誘導目標のレンジの下限近辺で推移していましたが、マイナス金利導入以降はこの預金金利を基準に、短期金利が推移しています。

日本では、マイナス金利に賛否両論ありますが、強気の黒田日銀総裁がマイナス金利を撤回することは見込み薄。マイナス金利の適用は当座預金の一部とは言え、▲0.1%が短期金利の目安になっていくとみられます。

 

2.年内の利下げ観測が強まる

逆に、短期金融市場が織り込む将来の短期金利をみると、マイナス金利導入を決定した1月29日には当面▲0.05%前後で推移するとの織り込みでしたが、徐々に利下げ観測が強まっています。直近では、年内に0.10%~0.20%程度の追加利下げが実施されるとの織り込みです(図表4)。

2月15日には日経平均株価が1,000円を超える上昇となるなど、これまでの巻き戻しの動きが強まった場面でも、10年債利回りである長期金利の上昇は0.005%と小幅にとどまりました。また、翌日以降は低下に転じるなど、逃避需要が後退したにもかかわらず国内債の利回りは低下(価格は上昇)する動きになりました。当面、追加利下げ観測を背景に、国内債の利回りは上昇しにくい状況が続くことが想定されます。

マイナス金利が国内金利を押し下げる中、利回り面では、利回りがプラス圏にある超長期債、また利回り面で妙味があるJリートや高配当銘柄などが投資先として挙げられそうです。また、為替変動をヘッジした外債投資なども検討したいところです。

20160219

 

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