米利上げ開始、今後は利上げペースに関心

2015/12/18

1.9年半ぶりの利上げを無難に通過

米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、大方の予想通り、9年半ぶりの利上げに踏み切り、政策金利を0~0.25%から0.25~0.5%に引き上げました(図表1)。利上げ開始は11年半ぶり、またゼロ金利解除は7年ぶりとなりました。また、量的緩和時に買い入れた債券については、償還元本を再投資し、残高を維持するとしています。

FRBは、“労働市場のさらなる改善、インフレ率が中期的に2%へ戻るとの合理的な確信という利上げの条件が満たされたと判断し”、利上げを決めた模様です。

米金融市場では、利上げ開始を織り込んでいたこと、米経済が利上げに耐えうるとの見方が広がったこと、利上げのペースは緩やかになると見込まれること、また米金融政策をめぐる不透明感が後退したことから、米株、ドルは上昇、米長期金利は小幅な上昇にとどまるなど、利上げ開始は波乱なく通過した格好です(図表2、3、4)。

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2.依然として、米金融当局と市場の見方は乖離

今後は、次回の利上げ時期や利上げのペースなどに関心が移ることになります。FOMC委員の政策金利見通し(中央値)をみると、2016年末は9月時点の見通しと変わらず、2017年末、2018年は若干低下しましたが、長期見通しは3.5%で変わっていません(図表5)。

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前回の利上げ局面では2004年6月から2006年6月のすべてのFOMC(年8回)で、0.25%の利上げが実施されました(図表6)。この前回の利上げ局面と比べると、今回のFOMC委員の政策金利見通しは半分の利上げペースとなっています。利上げ回数は、2016年が4回、2017年が4回、2018年が3~4回の見通しです。もっとも、米短期金融市場が織り込む利上げ回数は、2016年で2回程度、2017年は2回程度、2018年は1~2回程度と、更に半分の利上げペースの織り込みになっています(図表7)。今回のFOMCで、政策金利見通しが引き下げられ、市場の織り込みに近づくとみていましたが、依然として米金融当局者は、市場より利上げに前のめりのようです。

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次回の利上げ時期については、3月もしくは4月のFOMCとの観測が出てきています。仮に3月利上げならば、年4回の利上げペースとの認識が広がりそうです。

米国債利回りは10月半ばから、年内の利上げ開始を織り込む形で上昇しています。年内1回分の利上げはすでに織り込んでいることから、しばらくは利回りが急上昇する場面は避けられそうです。ただ、政策金利との連動性が比較的高い中短期債利回りについては、次の利上げを睨んで上昇圧力がかかることから、日米金利差は拡大していくとみられます。ドル円についても日米の緩やかな金利差拡大に伴い、弱いながらもドル高・円安圧力がかかりそうです。もっとも、米国の利上げやそれに伴うドル高が、米国経済や米企業業績の下押し圧力となった場合には、米金利の上昇やドル高が抑制される可能性があります。

ひとまず、FRBが警戒していた利上げ開始時の金融市場の過剰反応は回避できた格好ですが、利上げの影響、次回の利上げ時期については、米国の経済指標などを確認しながら、見極めていくことになります。

20151217参考

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