公的年金は、押し上げから下支えに

2015/12/03

1.GPIFの7-9月の運用状況

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は11月30日、2015年7-9月の運用状況を公表しました(図表1)。運用利回りは5.59%のマイナス、運用損失は7兆8,899億円となりました。中国発の世界経済の減速懸念を背景に、内外の株価が大きく下落した影響を受けてしまった格好です。もっとも、10月以降については株価などが持ち直しており、11月末時点では7-9月の損失の大半を取り戻しているとみられます。公的年金は、運用方針見直し前の、国内債券中心の比較的リスクの小さい運用から、リスク資産中心の運用にシフトしており、短期的な資産価格の振れは覚悟する必要がありそうです。

表

2.運用方針見直しはおおむね終了

公的・準公的年金は、2013年11月の公表された「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」の報告書で、“国内債券を中心とする現在のポートフォリオの見直しが必要”、“運用対象の多様化を図り、分散投資を進めることを検討すべき”との提言を受け、運用方針見直しを本格化させました。

GPIFについては、2013年3月末には60%弱であった国内債券の資産構成割合は、2015年3月末には39%強、9月末には39%弱まで低下しています(図表2)。一方、国内株式の資産構成割合は、2013年3月末の14%強から、2015年3月末には22%、6月末には23.39%まで上昇しました。9月末は21.35%と、相場の下落を受けやや低下しています。11月末の試算では、国内債券は37%前後まで低下、国内株式の割合は23%前後まで上昇している可能性があります。

公的・準公的年金であるGPIFと、国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団の3共済は、同じモデルポートフォリオを定め、今年10月1から積立金の運用を一元化するとしていました。したがって、すでに運用方針の見直しにかかる資産構成の見直しはおおむね目処がついたものと考えられます。

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3.今後の投資行動は?

今後は、相場が上昇した場合には売却し構成割合を下げる、また逆に相場が下落した場合には買い増して構成割合を上げる投資行動(逆張り)に戻るとみられます。年金資金が経由する信託銀行の株式の売買動向をみると、2015年に入り逆張りの傾向がやや強まっています(図表3)。

これまで国内株式市場をけん引してきた公的年金ですが、これからは相場が下落した局面での下支え役となりそうです。とはいえ、まだ基本ポートフォリオの水準には届いていないため、いざというときの押し上げも期待したいところです。

参考

 

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