日銀、YCCを再修正し、長期金利の上限を1%目途に
― 今回の金融政策決定会合のポイント ―
- 長期金利の誘導目標はゼロ%程度としつつ、±0.5%程度を目途としていた変動幅を撤廃
- 長期金利の上限を1%目途にし、1%を一定程度上回る金利上昇を容認
- 毎営業日実施していた長期金利1%での連続指値オペを取りやめ、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行う方針
- マイナス金利政策は維持
- 上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(Jリート)等の買入れは継続
- 引き続き、粘り強く金融緩和を継続する姿勢
▣ 長期金利の上限を1%目途にし、1%を一定程度上回ることを容認
日銀は10月30、31日に開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を決めました。ただ、マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)買い入れといった大規模な金融緩和策の大枠は維持しました。
日銀はこれまで0.5%程度を長期金利の上限の「目途」としたうえで、国債を無制限に買い入れる指値オペで金利を1%以下に抑え込んできましたが、今回、上限の目途を0.5%程度から1%に引き上げました。毎営業日実施していた長期金利1%での連続指値オペで、厳格に金利を抑え込むのではなく、金利の実勢等を踏まえて適宜決定するとし、長期金利が1%を一定程度上回ることを容認しました。
▣ 投機的な金利上昇には機動的に対応
金融市場の機能回復に加え、YCCアタック(投機筋による長期金利上限引上げなどの政策修正を狙った国債売り)などを意識して、上限1%を厳格化せず、目途とした形です。今回の措置でYCCアタックは仕掛けにくくなりましたが、日銀の許容上限を試す動きが出てくることには注意が必要かもしれません。
もっとも、植田日銀総裁は記者会見で、長期金利は1%を大幅に上回るとはみておらず、投機的な金利上昇には機動的に対応するとしています。
▣ 日銀による機動的なオペ運営を確認しながら、落ち着きどころを探る
今後は、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ打ち止めやその後の利下げが見えてくれば、米長期金利の上昇が一服することに加え、ドル高・円安圧力が後退することから、円安抑制のために金融政策を修正する必要性や国内金利の上昇圧力が和らぐことも想定されます。
しばらくは、米金利動向をにらみつつ、日銀のオペ運営(利回りを指定して国債を無制限に買い入れる指値オペのタイミングやその利回り水準等)を確認しながら、長期金利の落ち着きどころを探る展開が続きそうです。
日銀は今回公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、物価見通しを引き上げましたが、植田総裁は2%物価目標の実現について、十分な確度をもって見通せる状況には至っていないとしています(図表1)。
マイナス金利解除やYCC撤廃は、来年の春闘などの賃上げ状況とその物価への影響などを確認してからになる可能性が高そうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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