日銀がYCCを撤廃した場合の目安

2023/01/26 <>

▣ イールドカーブの歪みはまだ解消されていない状況

日銀は昨年12月、新発10年国債利回り水準が前後の年限の国債利回りに比べ低く抑えられている歪んだ金利形成(イールドカーブ、利回り曲線)を是正することなどを目的に、許容する長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げました。

また、1月の金融政策決定会合では現状維持を決めましたが、金利上昇を抑制するために「共通担保資金供給オペ」(金融機関への資金供給オペ)を拡充しました。

もっとも、イールドカーブの歪みはまだ解消されていない状況で、市場では日銀が許容する長期金利の上限引上げや、長期金利をゼロ%程度に誘導するイールドカーブ・コントロール(YCC)撤廃などの、政策修正観測がくすぶります。

▣ スワップ金利のイールドカーブは歪みのない形状

国債のイールドカーブの歪みは解消されていませんが、日銀による国債買入れの影響を受けにくいスワップ金利については、きれいな上に凸の形状をしています(図表1)。

今後、仮にイールドカーブ・コントロールが撤廃された場合には、スワップ金利のイールドカーブが参考になる可能性があります。

▣ YCC撤廃なら長期金利は0.8%~1%程度に上昇も

10年物国債利回りと期間10年のスワップ金利はほぼ同水準で連動して推移してきたものの、2022年に入り、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ開始や、国内でも物価上昇への懸念が浮上し、長期金利が日銀の許容する0.25%付近での動きが定着して以降、乖離が広がりました(図表2)。

期間10年のスワップ金利は、一時1%程度まで上昇しましたが、日銀が1月の会合で前回引き上げた許容する長期金利の上限0.5%を維持したことや、金利上昇を抑えるため共通担保資金供給オペを拡充したことを受け、0.8%程度まで低下しています。

今後、イールドカーブ・コントロールが撤廃された場合には、上限がなくなった長期金利は0.8%~1%程度が上昇の目安になることも想定されます。また、国債のイールドカーブが全体的に上に凸の形状となった場合には、年限が10年までの国債利回りは0.1%~0.4%程度上昇する可能性があります。

▣ YCC撤廃の超長期債への影響は限定的か

20年、30年債利回りについては、大規模な金融緩和の修正を織り込む形で、スワップ金利と同じように上昇してきたことから、イールドカーブ・コントロール撤廃の影響は、年限が短い国債よりも小さくなりそうです(図表3)。

長い目で見れば、20年債、30年債などの超長期債への投資は継続できそうです。一方、10年以下の国債については、新総裁下での金融政策運営が見えるまでは、積極的には買いにくい状況が続きそうです。

 

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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