再び円安が進行

2022/06/09

▣ ドル円は134円台まで上昇

5月下旬に一時126円台まで下落したドル円が再び上昇してきています(図表1)。6月7日には2002年4月以来およそ20年2か月ぶりに133円まで上昇、8日のニューヨーク外国為替市場では134円台と、2002年2月以来の水準まで上昇しました。

6月3日に発表された5月の米雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引締めを進めるとの見方が広がる中、米長期金利が上昇に転じたことや、日銀の黒田総裁が参院財政金融委員会で「強力な金融緩和を粘り強く続ける」ことを改めて表明したこと、また円安をけん制しなかったことなどが、ドル高、円安の要因として挙げられます。

日本の貿易赤字が常態化しつつあることも円安材料(輸入企業の円売り・ドル買い需要)です。

▣ 日銀の大胆な金融緩和は継続

日銀は、現在は大部分の価格は依然としてあまり上昇しておらず、一部のエネルギー、食品価格が大きく上昇しており、低インフレと一部価格の上昇が同居している状況で、低インフレについては引き続き、金融緩和の粘り強い継続が必要との考えです。

政府も「経済財政運営と改革の基本方針2022」で、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待するとしており、大胆な金融緩和が少なくとも来年4月の黒田総裁の任期満了までは継続する可能性が高いとみられます。

▣ 日銀のYCCが足かせ

日銀は2%の物価安定目標の達成のため、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)として、長期金利をゼロ%程度(ゼロ±0.25%)に誘導しています。5月からは長期金利が0.25%を超えないよう国債を無制限に買い入れる指値オペを、原則、毎営業日実施しています。

欧米の中央銀行のように、短期金利を主な操作目標としていれば、長期金利はある程度柔軟に動くことができますが、日本の長期金利については0.25%までという制約があります。

日本の長期金利が米金利にある程度追随できれば、円安進行を抑制できる可能性もありますが、黒田日銀総裁は0.25%を超える長期金利上昇は経済にプラスにならないと述べており、可能性は低そうです。

▣ 日米金利差と比べると

ドル円は日米の金利差とほぼ連動して動いています。

足元の5年債利回りの日米の格差は、5月上旬の水準を若干下回っているのに対し、ドル円は20年ぶり安値を更新した5月上旬の水準(131円台前半)を上回ってきています(図表2、3)。

日米金利差からは、ドル高、円安の勢いが強すぎるとの見方もできそうです。

▣ 米インフレの落ち着き待ち

米金融市場は、6月、7月に続き、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.5%の利上げが行われることを織り込んできています。また、FRBによる積極的な金融引締めが景気を悪化させるとの警戒も根強く、米5年債利回りや米10年債利回りの更なる上昇は抑制されるとの見方もできます。

とはいえ、日銀が金融政策を調整する可能性は低いため、米国のインフレが落ち着き、積極的な金融引締めがピークアウトするまでは、ドル高、円安圧力がかかる可能性があります。

10日発表の米消費者物価指数や14、15日のFOMCを確認するまでは神経質な動きが続きそうです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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