不安定な米長期金利

2021/03/11

▣ 米債券市場は再び不安定な動き

米国の長期金利(10年債利回り)は2月半ば以降に急上昇した後、一旦落ち着きを取り戻しましたが、3月5日には一時1.62%まで上昇するなど、再び不安定な動きになっています(図表1)。また、為替市場でも、米金利上昇などを背景に、2月には104円半ば~106円を中心としたレンジでもみ合っていたドル円が、3月9日には一時109円台まで上昇しました。

▣ 米金利上昇の主な要因は

主な要因としては、1.9兆ドル規模の経済対策が上院、下院で可決され、12日にも成立する見通しになったことや、バイデン米大統領が「5月末までに米国の成人全員分のワクチンを確保できる」と述べるなど新型コロナワクチンの普及が進む中、

  • 景気回復期待の一段の強まり
  • 期待インフレ率の上昇
  • 巨額の財政出動により米国債が増発され、米国債の需給が悪化するとの懸念
  • 将来的なテーパリング(米連邦準備制度理事会(FRB)による米国債等購入の縮小)への懸念
  • 利上げ時期の前倒し観測の浮上

などが挙げられます。

加えて、バイデン政権が3月にも大規模な環境・インフラ投資を発表すると伝えられており、米国債増発による需給悪化が一段と懸念されることも、金利を押し上げているとみられます。

▣ FOMC待ち

ただ、名目金利(ここでは長期金利の指標となる10年債利回り)は上昇しているものの、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の絶対水準は依然として非常に低い状況です(図表2)。市場は、FRBがどこまで金利上昇を容認するかを試す動きにもなっていますが、パウエルFRB議長らは静観する姿勢を崩していません。ある程度の長期金利の上昇を容認し、過去最高値を更新している米国株などの資産価格の過熱を抑える意図があるのかもしれません。

とはいえ、長期金利が一段と上昇する場面では、株式市場が荒れた展開になり、FRBの行動(金利上昇の抑制)を促す、催促相場になる可能性があります。また、実質金利の上昇は景気の足を引っ張ることから、一段と金利が上昇する場面では、FRBは金利の上昇をけん制、もしくは量的緩和策で買い入れている米国債の年限の長期化などで金利上昇を抑制することも想定されます。

来週の米連邦公開市場委員会(FOMC、3/16-17)、委員会後のパウエル議長の記者会見での発言、また、昨年12月には2023年末までゼロ金利政策を続けることが示された政策金利見通しが変更されるかどうかなどを確認するまでは、米債券市場は不安定な動きが続きそうです。

図表、スケジュール入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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