生保の2020年度下期の運用計画
国内の大手生命保険会社の2020年度下期の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICKロイター、Bloombergなどの報道を基に、運用計画をまとめています。
生保各社は、2025年にも導入される規制により、保険の期間と債券などの運用期間をできるだけあわせるため、平均的な保険契約の期間に比べて短いとされる運用期間を長期化する必要があります。そのため、国内の超長期債については積み増し傾向が強いことに加え、30年債や40年債の利回り上昇を受け、投資妙味が出てきていることから、生保各社の超長期債への投資が国内債券のイールドカーブ(利回り曲線)の一段のスティープ化(利回り上昇、急こう配化)を抑制しそうです。
また、国内の超長期債の積み増しのほか、リスク分散と収益強化(オルタナティブ(代替)資産への投資継続)、ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した投資強化などが目立ちます。
下期の運用方針について抜粋した各社の主なコメントは以下のとおりです。
◆ 国内債券 ~ 低金利が長期化する中、引き続き超長期国債や社債中心 ~
- 金利水準によらず国債を積み増す方向だが、金利水準が上がってくれば加速させることも考える。
- 引き続き利回り水準を見極めて円建て債を増やす。
- 残存20年物や30年物の利回りは投資しやすい金利水準になってきたが、絶対水準はまだ低い。
- 金利水準を考慮しつつ超長期債に投資。
- 超長期債の利回りが他の先進国で低下する一方、国内は上がってきており、妙味が出てきた。
- 日本国債の30年物や40年物の利回り6%台は魅力的な水準。
- 社債等で利回りを確保し、残りは超長期の国債を中心に積み増す。
- 下期は社債などクレジット資産の組み入れを加速させる。
◆ 外国債券 ~ 国債(ソブリン※)からクレジット資産へ、為替ヘッジの有無はまちまち ~
- 為替の変動リスクを回避した外債投資(為替ヘッジ付き外債)については利回りの低い国債を売却し、利回りの上乗せを獲得できる社債へ入れ替える。
- 社債などクレジット資産を対象とした為替ヘッジ付外債を増加させる方針。
- 円高進行への警戒感から外債のヘッジ比率は高めを維持する。
- 下半期は為替ヘッジをしっかり活用し、比較的利回りの高い海外の社債に資金を振り向ける。
- 為替や金利水準に留意しつつ、為替ヘッジなしの外債(オープン外債)では相対的に高いリターンが期待できる米ドル建て、豪ドル建ての債券を中心に買い入れを行う方針。
- 為替ヘッジなしの外国債券は、先進国の国債やクレジット商品中心に投資する。
※ソブリン債:国債や政府機関債など、中央政府や政府機関、また国際機関によって発行された債券。
◆ 国内株式 ~ 各社まちまち、割安な水準なら買入れも ~
- 国内株はリスク管理を目的とした売却などで残高は減少する見込みだが、株価水準次第で機動的に調整する。
- リスクが高い割には全体のリターンは厳しいとの見方もあり、積極的には積み増しできない。
- 2020年度末にかけて一時的に調整する可能性があると予想。
- 中長期的に割安な水準での買い入れを検討。
- 配当利回りに着目して調整局面では押し目買いのスタンスで臨む。
- 慎重さを維持しつつも、株価が調整したところで残高を積み増す。日経平均株価の2万円割れが1つの目安。
◆ 外国株式 ~ 水準次第 ~
- 外国株残高はリスク許容度や株価水準次第。
- 相場が調整し割安感が強まった局面で、安定した配当が見込める株式に投資する。
◆ その他 ~ リスク低減・リターン向上にESGやオルタナティブ ~
- ESG(環境・社会・企業統治)は中長期の資産運用において、リスク低減とリターン向上に不可欠。
- リスク分散と収益強化として、株や債券などの伝統で資産との相関が低く、リスク・リターン効率の改善が見込めるヘッジファンドやインフラファンドなどのオルタナティブ(代替)資産への投資継続。
- 長期的に高い収益が見込まれるプライベート・エクイティ(未公開株式、PE)ファンドへの投資や、不動産残高を積み上げる。
- オルタナティブ投資は安定的な収益が見込めるインフラファンドなどを中心に積み増す。
- 金利や株のリスク量の削減を目指す。
◆ 下期の相場見通し(図表2)
- 長期金利については、ゼロ%程度での動きが継続。
- 米長期金利については、足元の水準(8%前後)より目線は上。
- 国内株については一部を除き、大幅な上昇は見込まず。
- NYダウについては、堅調に推移するとの見方が大勢。
- 円ドルは105円前後と、足元の水準から大きく外れない見通し。
- 円ユーロは120円台前半中心と、こちらも足元の水準から大きく外れない見通し。
図表、スケジュール入りのレポートはこちらのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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