Jリート、オフィス賃料の上昇一服は重しも

2020/09/11 <>

▣ 平均賃料は80か月ぶりに下落

オフィス仲介の三鬼商事が9月10日に発表した8月時点の東京都心のオフィス空室率は3.07%と、前月比0.30ポイント上昇しました(図表1)。6か月連続で上昇し、2018年1月以来の水準です。新築ビルが一部で募集面積を残して竣工したことに加え、大型解約の動きは少なかったものの、規模縮小などに伴う中小規模の解約の動きが相次いだことが、既存ビルの空室率を押し上げた模様です。

他方、平均賃料については前月比では80か月ぶりに上昇が止まりました。もっとも、新築ビルについては前月比で上昇しており、また前年同月比では上昇が続いています(図表2)。また、札幌、仙台、横浜、名古屋、大阪、福岡などでは、8月の平均賃料は前月比で上昇しました。

▣ オフィス市況を支える労働市場は底堅く推移か

オフィス市況を支える労働市場については、失業率が昨年末に2.2%と1992年以来の水準まで低下して底を打ち、今年5月には2.9%まで上昇して以降は、6月は2.8%、7月は2.9%と、上昇が鈍ってきています(図表3)。

だた、有効求人倍率が急激に低下していることは気がかりです。リーマンショック時には有効求人倍率は1.08倍から0.42倍まで低下しました。今回は昨年4月の1.63倍から今年7月の1.08倍まで低下しています。リーマンショック時と同じ幅だけ低下すると1倍を若干切る水準です。とはいえ、当時を上回る大規模な金融緩和政策、経済政策が打ち出される中、有効求人倍率が1倍を若干下回る程度までの低下にとどまれば、労働市場は底堅く推移しそうです。

ESPフォーキャスト8月調査※によると、失業率は今年の10-12月期に3.46%まで上昇し、その後は緩やかに低下していくとの見通しです。加えて、オフィスビルの供給量は2021年、22年は減少するため、需給の軟化は限定的とみられることもオフィス市況の下支え材料です(図表4)。

▣ 予想分配金も安定的、FTSE全世界指数に組み入れも下支え

Jリートの予想分配金は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け一旦低下しましたが、足元では安定して推移しています(図表5)。

また、グローバル投資家向けのベンチマーク指数であるFTSE全世界指数の定期見直しで、Jリートが新規に採用されたことも安心材料です(9月から四半期ごとに4回に分けて実施され、2021年6月で完了、指数に連動するファンドからの資金流入が期待できる)。

なかなか収束しない新型コロナウイルスの流行やリモートワークの広がりなどは重しながら、4%を超える相対的に高い予想分配金利回りに着目した買いも根強く、底堅い動きが見込まれます(図表6)。

濃厚とされているものの、11日に開かれる政府の分科会で、「Go To トラベル」に東京が追加されるかも確認したいところです。

 

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