生保の2020年度の運用計画
国内の大手生命保険会社の2020年度の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICK、ロイター、Bloomberg、時事通信社などの報道を基に、運用計画をまとめています。
▣ 国内債券
現金給付などを含む新型コロナウイルス感染拡大に伴う大型の緊急経済対策に伴い、国債が増発され、需給が悪化することは懸念材料ながら、日銀が国債を積極的に買う方針を表明したことから、2020年度についても国内金利の上昇は限定的とみられます。国内の金利が低位で推移すると見込まれる中、社債などのクレジット物(信用リスクがあり、その分利回りが上乗せされる債券)や超長期国債など、比較的利回りの高い債券に振り向ける傾向は変わっていない模様です。超長期国債については、利回りが0.5%程度はほしいとの声もありますが、そこまでいかなくても、金利が上昇する場面では超長期国債を中心に買いが強まる可能性が高そうです。
▣ 外国債券
米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策を再開するなど、各国の中央銀行が大幅な利下げや国債買入れなどに動き、国債などの利回りが大きく低下しており、外国債券についても、比較的利回りの高い社債などへの投資が中心です。為替の変動リスクを回避するヘッジ付き外債、ヘッジなしのオープン外債のどちらを重視するかは各社まちまちです。ただ、新型コロナウイルスの影響で格下げリスクが警戒されることから、過度な信用リスクは取らず、比較的安全な投資適格級の社債への投資が中心の模様です。
▣ 内外の株式
内外の株式については、不安定な動きが続く中、価格変動リスクを抑制するため残高を減らす方針の生保が散見されますが、中長期的には割安とみて、残高を積み上げる生保の方が多いようです。株価については二番底も警戒されていますが、一段の下落局面では買い意欲が強まる一方、割安感が解消されると積極的な買いが手控えられる可能性がありそうです。
▣ その他
他方、インフラ事業に投資するインフラファンド、プライベートエクイティ(未公開株)ファンド、不動産、プロジェクトファイナンス(特定事業から生み出されるキャッシュフローを裏付けにした融資)等の投資など、オルタナティブ(代替)投資の拡大など、低金利下で投資を多様化し、収益の向上を図る姿勢がみられます。
▣ 今年度の相場見通し
今後については新型コロナウイルス次第ですが、「各国の大規模な財政・金融政策で景気が下支えされている間に、ワクチン開発によって新型コロナの収束期待が高まり、年度末に向けて景気が回復する」、「4-6月期の国内総生産(GDP)成長率はリーマンショック時以上のマイナス成長となるが、7-9月期から底入れし、実体経済はU字型回復する」がメインシナリオのようです。
国内の長期金利については、おおむね0.0%近辺での推移が続くとの見方です(図表2)。米長期金利については、足元の0.6~0.7%の水準から1.0%程度まで上昇していくと、メインシナリオに沿った動きを予想しています。
日経平均株価、NYダウについては二番底の可能性はあるものの、徐々に回復していくとの見方です。ただ、日経平均株価については直近高値の2万4,000円強、NYダウは2月に更新した過去最高値の2万9,000ドル半ばを上回るのは、年度内は難しいとの見方です。
ドル円については、おおむね100~110円台半ばが予想レンジ。100円に近づくと、為替ヘッジなしのオープン外債投資が広がることも想定されます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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