長期金利がプラス圏に浮上、定着するためには
▣ 長期金利は2016年に初めてマイナスに
長期金利が初めてマイナス圏に沈んだのは、2016年1月末に日銀がマイナス金利政策(金融機関が日本銀行に預けている資金の一部(政策金利残高)にマイナス金利(▲0.1%)を適用)を導入したことが主因でした(図表1)。
長期金利はその年の2月下旬からマイナスで推移し、英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け、欧州経済の先行き不透明感が広がる中、7月8日には投資家のリスク回避姿勢が強まり、過去最低のマイナス0.30%まで低下しました。その後、7月末の日銀金融政策決定会合で利下げが見送られたことを受け、マイナス金利の深掘り観測が大きく後退し、マイナス0.1%半ばまで上昇しました。9月には日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、長期金利をゼロ%程度で推移するように長期国債を買い入れる方針を示したことから、一瞬0.005%とプラスを付けました。
その後は落ち着きを取り戻し、マイナス圏での推移が続いていましたが、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、同氏の政策でインフレ傾向が強まるとともに、財政は悪化するとの懸念から、一気にプラス圏に浮上しました。その後、2017年2月3日には長期金利が0.15%まで上昇したことを受け、日銀は固定利回りで無制限に国債を買い入れる“指し値オペ”を実施し、金利上昇を抑制しました。以降2018年半ばまでは、おおむね0.0~0.1%のレンジが続きました。
▣ 2019年も2016年と似通った動き
2019年の長期金利も2月以降、日銀の金融緩和策が長期化するとの見方が強まる中、米利上げの停止観測や7月からの米利下げ再開などから、マイナス圏での推移が定着しました。9月に入り、米中貿易摩擦や英国のEU離脱をめぐる不透明感、また香港情勢への警戒に加え、米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の悪化を受けた米景気減速への懸念を背景に、米長期金利は一時1.4%台前半まで低下(図表2)、国内の長期金利も4日には一時マイナス0.295%と、過去最低に迫りました。
その後は、米中貿易協議の進展期待が強まったことや過度な米利下げ観測が後退したこと、国内でも日銀のマイナス金利の深掘り観測が後退したことなどを背景に、12月3日には一時マイナス0.02%、6日にはマイナス0.15%と、ゼロ%に接近しました。
▣ プラス圏浮上には
2019年は2016年と同様、日銀のマイナス金利政策が続く一方、マイナス金利の深掘り観測は大きく後退しています。他方、米連邦準備制度理事会(FRB)は2015年12月に利上げして以降、2016年12月まで利上げは休止状態でした。足元も、FRBは10月の利下げ後は政策変更を休止した可能性が高く、米金融政策の市場への影響は後退しています。
国内の長期金利がプラス圏に浮上するには、2016年と同様、トランプ氏の影響が大きそうです。米中貿易協議が何らかの合意に至り、米中対立への警戒や世界経済の先行き不透明感が後退すると、内外の金利に上昇圧力が掛かり、国内の長期金利がプラス圏に浮上することも想定されます。
▣ プラス圏定着には
2017年はトランプラリーが継続し、内外の株価が大幅に上昇したことに加え(図表3)、米利上げ継続が日米の長期金利の低下を抑制し、国内の長期金利はおおむねプラス圏で推移しました。プラス圏が定着するには、投資家のリスクオン(選好)継続と、金融政策の変更が必要となりそうです。
今後、仮に米中対立への警戒が大きく後退し、投資家のリスク選好が続いた場合には、安全資産とされる国債が軟調に推移(利回り上昇)する可能性はありそうです。日銀の長期国債買入れ額も減少傾向が続いています(図表4)。
もっとも、FRBは利下げを休止しただけで、利上げには著しい物価上昇が必要としており、利上げにはまだ距離がある状況です。日銀についても、2%の物価目標達成を全く見通せない状況です。仮にプラス圏に浮上しても、日銀が長期金利をゼロ%程度とする金融政策を変更しない限り、金利の上昇は限定的になるとみられます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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