FRB、利下げ休止も、期待は残す

2019/11/01

▣ 米利下げは今回で一旦休止、ただ利上げまでは距離

米連邦準備制度理事会(FRB)は10月29、30日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を0.25%幅引き下げて1.50~1.75%とすることを決めました。7月、9月に続き、3会合連続での利下げになりました(図表1)。

今回のFOMCでは、追加利下げは確実視されていましたが、利下げが継続されるかなど、以降の金融政策が示唆されるかが注目されました。

声明文からは、「力強い労働市場と対称的な2%目標に近いインフレを伴う景気拡大を維持するために適切に行動する」の文言を削除し、利下げ休止を示唆する一方、「経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを引き続き注視する」という文言を残し、今後の経済指標次第では追加の利下げに踏み切る可能性を残しました。

また、FOMC後の記者会見でパウエル議長が、「利上げを検討するなら、著しいインフレの上昇が条件になる」と発言し、利上げまではまだ距離があるとの見方から、市場に安心感が広がりました。

▣ 現状の政策金利水準が適切

パウエル議長の主な発言は以下のとおりです。

  • 個人消費は堅調で労働市場は力強いが、製造業における設備投資や輸入が低調なまま。そのため金融政策をより緩和方向にした
  • 経済に関して今後入ってくる情報が引き続きわれわれの見通しに沿う限り、現行の政策スタンスは適切であり続ける可能性が高い
  • 新たな展開が起これば景気見通しを再点検する
  • リスクは、減速している世界経済の成長、貿易政策動向、インフレ圧力の弱まり
  • 中国との貿易協議で第1段階の合意が得られれば緊張が和らぐとともに、不確実性も後退し、企業の景況感や活動にとって良い前兆となる
  • 英国の欧州連合(EU)からの合意なき離脱のリスクは小さくなってきた
  • 物価上昇率は2%以下にとどまり、期待物価上昇率も下がっている
  • 今現在、利上げは検討していない。利上げには著しいインフレの上昇が条件になる

▣ 市場の過度な利下げ期待は、貿易問題での米中部分合意以降、大きく後退

米短期金融市場が織り込む12月のFOMCでの利下げ確率は一時20%を割り込むなど、年内は利下げなしの見方が大勢になってきています。FRBは、米中貿易摩擦や英国のEU離脱への警戒が後退していることも手伝い、金融市場に悪影響を与えることなく、過度な利下げ期待を後退させた格好です。そのため、金融政策をめぐる思わくで荒れた展開になる可能性は低くなっているとみられます。

来年の利下げについては1回程度の織り込みでしたが、10月31日には米中貿易摩擦への楽観が若干後退したことなどから、1~2回に利下げの織り込み回数が増えました(図表2)。今後、米景気の先行き不透明感が強まる局面では、FRBが利下げに踏み切るとの期待が金融市場を支えそうです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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