日経平均株価のPBRが1倍に接近

2019/08/30 <>

▣ 強まる割安感

日経平均株価の株価純資産倍率(PBR)が8月に入り一時1.01倍と1倍に接近しており、日本株の割安感が強まっています(29日時点では1.02倍)(図表1)。主要企業ではトヨタのPBRが一時1倍割れ、京セラ、三菱重工業、富士フイルムホールディングスなどのPBRが1倍を割り込んでいます。パナソニックも足元では1.03倍と1倍に近づいています。

PBRは企業の純資産に対して株式の時価総額が何倍まで買われているかを示す投資指標で、低ければ低いほど割安と判断できます。純資産は総資産から借金などの負債を引いて算出され、企業が解散する際に株主に分配される資産であるため、解散価値とも呼ばれます。PBR=1倍は、株価と解散価値が同水準ということになります。

▣ PBR1倍が底値のめど

2010年~2012年は、日経平均株価は2011年にドル円が80円を割るなど、円高が進行したことや、ギリシャ発の欧州債務危機への警戒が株価を下押しし、PBR1倍割れが続きました。2013年以降は、欧州債務危機が沈静化したことや日銀の異次元緩和により円高に歯止めがかかったことから、PBRは概ね1倍を上回って推移しています。また2013年以降は、PBRが1.1倍を割り込むと割安感が高まり、1倍を割ると株価が反転する傾向がみられます。

2016年2月に中国など世界経済の先行きへの不安や中東の地政学リスクを背景に、投資家のリスク回避姿勢が強まった局面でPBRは0.99倍まで低下、2018年12月には米連邦準備制度理事会(FRB)が市場では想定よりタカ派(金融緩和縮小に慎重ではない)との見方が広がったことに加え、米国では暫定予算をめぐり、メキシコ国境の壁建設費用で折り合わず、一部の政府機関が閉鎖されたことを受けて投資家心理が大幅に悪化し、日経平均株価が2万円を大きく割り込んだ場面で、PBRは0.99倍を付けました。

2016年は英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票などへの警戒もあり、やや動きが鈍かったものの、いずれもその後は株価、PBRともに持ち直しました。

▣ 一段の低下は弱気に傾き過ぎか

8月に入り、日経平均株価は2万円~2万1,000円のレンジが続いていますが、PBR1倍に相当する2万円前後が下値のめどになっている格好です(図表2)。

今後は、米中の対立激化、円高進行、消費増税、英国のEU離脱への警戒などから、荒れた展開になる可能性もありますが、一段のPBRの低下には弱気に傾き過ぎとの見方も強まりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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