不確実性に備えるFRB、不確実性を高めるトランプ大統領
▣ 利下げの翌日に、対中制裁関税を表明
米連邦準備制度理事会(FRB)が7月31日、世界景気の減速や貿易政策の先行き不透明感を背景にした下振れリスクに備え、10年半ぶりの利下げに踏み切りました(図表1)。ただ、翌日にはトランプ米大統領が中国からの輸入品3,000億ドルに10%の制裁関税を課す対中関税「第4 弾」を9月1日に発動すると表明し、米中貿易摩擦への警戒感が再び高まることになりました。
▣ FRBは予防的利下げ決定
FRBは7月30、31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り政策金利である FF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0.25%幅引き下げ、2.00%~2.25%とすることを決めました。また、量的緩和政策で積みあがった米国債やMBS(不動産担保証券)などの保有資産の縮小終了についても、2か月前倒ししました。ただ、今回の決定には、ジョージ・カンザスシティー連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁が政策金利を据え置くことを求め反対しました。
31日の米金融市場は、織り込み済みとして利下げへの反応は限定的でした。パウエルFRB議長が会合後の記者会見で「今回は金融政策のサイクルの半ばでの調整であり、長期の利下げサイクルの始まりではない」と発言、景気後退や非常に厳しい経済停滞があるときにとる長期的な利下げではなく、95年や98年の予防的な利下げ局面を念頭に置いている模様です。予防的な利下げに踏み切るとの観測が事前に広がっていたものの、パウエル議長が一段の金融緩和に前向きな姿勢を示すとの期待が裏切られた格好となり、継続的な利下げへの期待が後退したことから、米国株が大きく下落、ドルは上昇しました。
▣ 想定外の関税発動表明
そして8月1日、トランプ氏が対中関税「第4 弾」の発動を表明したことがサプライズになり、米国株が急落、米国債は急上昇(利回り急低下)、ドルも急落しました。市場が織り込む9月の利下げ確率は、50%程度から86%程度まで急上昇、9月を含め12月までにあと2回以上利下げする確率は、50%から70%強に上昇する動きになりました。
トランプ氏は、中国からの輸入品3,000億ドルに10%の追加関税を課すことに加え、関税率は25%以上に引き上げることができるとしている一方、包括的協定に向け、前向きな対話を楽しみにしているとも発言しており、今後の通商協議での歩み寄りへの期待も見せています。
▣ 米中通商協議は継続、米金融政策はデータ次第
7月末に上海で行われた閣僚級の通商協議では、中国からの新たな提案は一切なかったと伝えられています。ただ、9月初めに予定どおりワシントンで再び協議を行う方針のようです。
金融市場は年内あと2回、来年0~1回の利下げをほぼ織り込んだことから、利下げ観測からの一段の米金利低下、ドルの下落は限定的とみられます(図表2)。
米金融政策については、パウエル議長は「先行きは経済データを注視する」としています。雇用統計などの経済指標を確認していくとともに、8月下旬のジャクソンホール会議で米金融政策の方向性が示唆されるかも注目されます。
米中貿易摩擦、米金融政策の両にらみの状況がしばらく続きそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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