FRBは市場に優しく
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月18、19日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きを決めました。ただ、インフレ率の見通しを引き下げるとともに、政策金利見通しも引き下げ、早期利下げの可能性を示唆し、市場の早期利下げ期待に応える内容となりました。
今回のFOMCの主なポイントは以下のとおりです。
(声明文)
- 経済活動の拡大について、“堅調なペース” → “緩やかなペース”に下方修正
- 企業の設備投資は“鈍化” → “軟調” に下方修正
- 将来のインフレを示す市場ベースの指標は、“ここ数か月で低くとどまっている” → “低下した”に下方修正
- “経済見通しに対する不透明感が高まった”の文言を追加
- “政策金利の将来的な調整に辛抱強くなる”の文言を削除し、“景気拡大を維持するために適切に行動する”の文言を追加
(経済見通し、図表1)
- 2019~20年のインフレ率見通しの中央値を引き下げ
- 2020年の経済成長率見通しは引き上げ
(政策金利見通し、図表2)
- 2019年の政策金利見通しの中央値は375%で利下げ回数は0回。
- もっとも、2019年の政策金利見通しは、年内2回の利下げが7名、1回の利下げが1名、現状維持が8名、利上げ1回が1名と、利下げを支持するメンバーが急増
- 2020年の中央値は125%、2021年は2.375%で足元の水準に戻り、長期見通しは2.5%に上昇。短期的には利下げはありうるものの、緩やかな利上げ局面に戻るとの見通し
(その他)
- セントルイス連銀のブラード総裁が25%の利下げを求めて反対票を投じた
- パウエル議長の記者会見での発言、「経済成長は続く見通しだが、米中貿易摩擦をめぐる先行き不透明感などを背景に当局者の懸念は5月のFOMC以降に強まった」、「予防は治療に勝る(An ounce of prevention is worth a pound of cure)」
現時点では、市場は7月のFOMC(7月30-31日)での利下げを100%織り込んでいる状況です。また、9月のFOMCまでに2回、12月のFOMCまでに3回の利下げを織り込んできています(図表3、4)。7月の利下げについては、6月末の20か国・地域(G20)首脳会議、米中首脳会談、7月5日に発表される米雇用統計などを確認する必要がありますが、中国との貿易摩擦で米国の経済の先行きに不確実性が高まっているとして、景気拡大を維持するために、早期の予防的な利下げに踏み切るかが、今後の焦点になります。
FRBは市場の期待に応えてくれるとの見方が広がっており、株式市場や債券市場には安心感が広がっています。市場の利下げ期待が大きい中、仮にFRBが利下げに慎重な姿勢を示すと金融市場が大きく荒れることになり注意が必要です。
金融市場が利下げに前のめりになる中、しばらくは、利下げをめぐる金融市場とFRBの温度差を確認していく必要があります。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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