米中貿易摩擦長期化も、FRBが下支え
▣ 第4弾、G20の後に決断
中国が5月に、米中貿易交渉の合意文書案を拒否したことを受け、米中貿易摩擦への楽観が大きく後退しています。5月10日には米国は第3弾の制裁関税(中国製品2,000億ドル相当)の関税率を25%に引き上げるとともに、トランプ米政権は対中制裁の「第4弾」として、残りの中国製品3,000億ドル相当への25%の追加関税を表明しました。これに対し、中国も6月1日に第3弾(米国製品600億ドル相当)の関税率の上限を25%に引き上げました。米中の貿易協議は進展していない模様で、主要20か国・地域(G20)首脳会議(6月28-29日、大阪)での米中首脳会談の実現も不透明な状況です。トランプ米大統領は第4弾の追加関税について「G20の後に決断するだろう」と発言するなど、第4弾の蓋然性が徐々に高まってきています。
▣ IMF見通し、4月の前提が崩れる
国際通貨基金(IMF)が4月に公表した世界経済見通しでは、
- 主要国での大幅な緩和政策が下支えすること
- 中国は財政政策と金融政策による景気刺激策を強化して貿易関税のマイナス効果に対抗していること
- 米中貿易摩擦については、貿易協定の可能性が具体化しつつあることから、見通しが改善していること
等を前提として、2018年後半に顕著であった世界経済の伸び悩みが2019年前半も続くものの、後半には改善が期待されるとして、2020年の世界の経済成長率は、2019年の3.3%から3.6%まで回復すると予測しました。
しかし、米中の対立が一段と激化していることを受け、IMFは6月5日に、米中の貿易摩擦による世界経済への最新の影響分析を公表。第4弾の追加関税まで含めると、2020年の世界全体の国内総生産(GDP)が0.5%減少するとの試算を示しました。
ただ、IMFのラガルド専務理事はインタビューで、企業の業況感や市場心理に打撃が及び、来年改善が見込まれる世界経済の成長が減速する可能性があるものの、世界経済が景気後退(リセッション)入りすることはないとの見方を示しました。
▣ 大統領選に影響が出始める前までには
とはいえ、米金融市場では景気の先行き不透明感が広がる中、利下げ観測が急速に強まっています。米短期金融市場の織り込みでは、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに1回以上利下げする確率は70%、12月のFOMCまでに3回以上の利下げが実施される確率は50%程度まで上昇しています(図表1)。
金融市場では利下げを催促する動きが強まっていますが、セントルイス連銀のブラード総裁が6月3日の講演で「景気減速への保険として、政策金利の引き下げが近く正当化される可能性がある」と発言、翌日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「景気拡大を持続させるため適切に行動する」と発言するなど、利下げに慎重だったFRBの姿勢も、予防的な利下げに傾いてきている模様です。
ちなみに、ブラード総裁は、「利下げに転じた1995年の局面では、米経済はリセッション入りせず、代わりに90年代後半を通じて好景気だった」と述べています。90年代後半は、一時、景気後退の予兆とされる長短金利の逆転が見られましたが、機動的な金融政策が大きく寄与した格好です(図表2)。ブラード総裁は、この局面を参考に利下げを考えている可能性がありそうです。
トランプ氏は、来年の大統領選再選に向けた公約実現の実績づくりのため、しばらく通商政策や移民政策などで強硬な姿勢を維持する可能性が高く、また中国も態度を硬化させていることから、米中貿易摩擦の長期化を覚悟する必要がありそうです。
とはいえ、大統領選再選に向け、来年の景気や株価への影響が大きくなる前までには、何らかの落としどころを探る動きが出てくることが見込まれます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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