FRB、引き締め姿勢は大きく後退

2019/03/22 <>

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月19、20日に開いた米公開市場委員会(FOMC)で、政策金利となるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を年2.25~2.5%に据え置きました。あわせて公表した政策金利見通しについては、今年の利上げ回数を昨年12月見通しの2回から0回に引き下げるとともに、「バランスシートの正常化の原則と計画」を改訂して、バランスシート(保有資産)の縮小ペースを5月から減額し、9月末で停止する方針を決定するなど、市場の予想以上に金融引き締めに慎重な姿勢が示されました。

▣ 政策金利見通しを引き下げ

2019年の利上げ回数については2回から1回に減るとの見方もありましたが、今回公表された見通しでは0回に引き下げられ、年内は利上げなしの見通しと、利上げに慎重な姿勢を一段と強めました(図表1)。2020年は1回の利上げで変わらずで、将来的な利上げの可能性を残した格好ですが、ほぼ利上げ局面は終了したとみられます。

また、長期見通しの水準は2.75%で変わらずでしたが、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない(景気を刺激も抑制もしない)中立的な金利の目安である長期見通しの水準に2021年まで政策金利が届かない、やや緩和的(景気刺激的)な金融環境が当面続くことになります。

▣ バランスシート(保有資産)の縮小は9月末で停止

FRBは2008年の世界的な金融危機を受けて、金利を操作し金融市場をコントロールする伝統的な金融政策に加え、非伝統的な金融政策である量的緩和政策を導入し、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を大量に買い入れ、市場に資金を供給しました。

2014年10月末で買入れを終了した後は、満期を迎えて払い戻された米国債などの償還金を再投資し、バランスシートの残高を維持していましたが、2017年10月から再投資を減額し、バランスシートを縮小してきています。2017年に4.5兆ドルまで拡大したFRBのバランスシートは、緩やかに縮小してきました。資産規模は現時点の約4兆ドルから3.5兆ドル強に減る見込みです。とはいえ、バランスシートの縮小が早めに打ち切られることから、市場には大量の緩和マネーが残されることになります。

▣ 米国経済の成長率見通しを引き下げ

また、米国経済見通しについて、海外経済、特にヨーロッパや中国の成長鈍化などを背景に2019年、2020年の経済成長率見通しを引き下げました。パウエルFRB議長は、英国の欧州連合(EU)離脱や貿易交渉などの未解決の政策問題は、経済の見通しにリスクをもたらすと、懸念を示しました。

インフレ率については、全体の見通しを下方修正する一方、エネルギーと食品を除いたコア指数の見通しは2019~2021年にそれぞれ2.0%上昇するとの従来の見通しを維持しました。

▣ 金融市場への影響は

景気刺激的な金融政策が株式市場を下支えする一方、ドルについては上昇が抑制されそうです。市場が織り込む今年の利上げ確率は0%まで低下し、利下げ確率が40%程度まで上昇してきています(図表2)。次は利下げとの見方が強まる中、米国の債券市場では年限が長い債券の利回りほど低下するイールドカーブ(利回り曲線)のブル・フラット化(利回り低下・平たん化)が進行し、長短金利がほぼ横並びの状況が続く可能性があります(図表3)。

米国の利上げ停止の可能性が高くなっており、日本の債券市場も、利回りの低下余地を探る動きが強まりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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