日銀は、マイナス金利の深掘りを望まず
ポイント:
- 日銀は国債買入れオペのオファー金額の減額で、金利(債券の利回り)低下を抑制
- オファー金額減額のタイミングは為替動向に配慮
- 減額の前、当日の水準が、当面の利回りの下限の目安
- 利回り一服後はこう着状態か、押し目買い意欲が強いと再びじりじりと利回り低下する可能性
▣ 日銀はブル・フラット化を抑制
日銀は、2月12日の国債買入れオペ(公開市場操作)で、残存期間「10年超25年以下」の買入額を前回の2,000億円から1,800億円に減額しました。債券市場は予想外として、マイナス0.03%程度であった長期金利はマイナス0.02%に、20年国債利回りは0.41%から0.42%に上昇と、イールドカーブ(利回り曲線)はベア・スティープ化(利回り上昇・急こう配化、年限が長い債券ほど利回り上昇)で反応しました。
日銀は昨年9月以降、月末に公表する「当面の月間買入予定」(翌月のオファー金額、国債買入れオペの日程)でオペの頻度を減らす一方、オファー金額を増やすことで、月間当たりの買入れ総額を緩やかに縮小してきました。「当面の月間買入予定」を変更せずに、従来のオファー金額を変更したのは昨年12月14日以来となります。
日銀が減額に踏み切ったのは、
- 2月8日の「3年超5年以下」の国債買入れオペで、応札額が少なかったことから、応札額が落札額に届かない“札割れ”が発生することへの警戒感があったこと
- 来年度の国債発行額が減額される見込みであり、日銀の国債買入れ額も、それに合わせて調整する必要があったこと
- 長期金利がマイナス圏、20年国債利回りも4%程度と2016年11月以来の水準まで低下するなど、昨年10月以降ブル・フラット化(利回り低下・平たん化、年限が長い債券ほど利回り低下)が進行していたこと(図表1、図表2)
- タイミングとしても年初に一時104円台まで下落したドル円が110円台まで戻ってきており、緩和姿勢が後退したとの見方から円高が進行するのを過度に警戒する必要がなかったこと
などが重なったためと推察されます。
▣ 円安が減額の条件か
日銀が、直近で従来のオファー金額から減らしたのは今回を除き、「3年超5年以下」は2018年6月14日(3,300億円→3,000億円)、「5年超10年以下」は2018年12月14日(4,500億円→4,300億円)、「10年超25年以下」は2018年7月19日(1,900億円→1,800億円)、「25年超」は2018年9月21日(600億円→500億円)で、いずれもドル円は110円以上でした。
2016年に長期金利がマイナス0.3%程度まで低下するなど、極端に利回りが低下した局面では、円高が進行していたにもかかわらず国債買入れを減額しましたが、以降は総じて、ドル円が110円を下回っている局面では、国債買入れの減額には慎重な姿勢がみられます(図表3)。金利低下を抑制するため、オファー金額を減額する条件は、円高が進行していないことと言えそうです。
当面は、減額前日、当日である2月8日、12日の水準が長期金利(10年債利回り)や20年債など超長期債利回りの下限の目安となりそうです(10年債はマイナス0.03%程度、20年債は0.4%程度、30年債は0.58%程度、40年債は0.65%程度)。
イールドカーブはひとまず、ベア・スティープ化が見込まれ、押し目買いスタンスで臨むことになりそうですが、日銀の金融緩和が長期化する中、プラスの利回りを選好する動きは根強いとみられ、利回り上昇も限定的となりそうです。
世界経済の減速懸念や米利上げ観測の後退など利回りを押し上げる材料に欠ける中、今回のオファー金額減額を受けた利回り上昇が一服すると、国内の債券市場は上にも下にも行きにくい、こう着した動きになりそうです。その後は、再びじりじりとブル・フラット化が進行することも想定されます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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