グローバルエリートの責任は重い

2019/01/31 <>

世界経済の減速懸念

今年の世界経済は、昨年や一昨年に比べ成長率が若干低下しそうです。とはいえ、3%台半ばを維持することはできると予想されます。むしろ底堅い成長だとポジティブに評価すべき水準です(図表1)。

それでも「世界経済の減速懸念」が流行語になっているのは、成長率が今の予想から上振れするよりも、下振れする可能性の方が高いためです。米国が保護貿易策を改めなければ、成長率はもっと下がるでしょう。他方、かつて経験した5%超の成長軌道へ近い将来に戻る可能性は、ほぼ無いと言えます。

グローバリゼーションの貢献

リーマンショック前の高成長は、二つの要素によるものです。一つは、米欧などで発生した住宅などのバブルです。もう一つは、中国を始めとする新興国が、世界市場へ本格的に組み込まれたことです。

バブルは崩壊後の傷が大きいので、再来を待望すべきではありません。よって経済の活性化には、世界市場のさらなる統合・深化が必要です。これをグローバリゼーション(グローバル化、世界化)と呼ぶとすれば、それが世界(特に新興国)に多大な貢献を果たしてきたことを、否定するのは誤りです。

グローバリズム vs ナショナリズム

ただ、グローバル化には批判も絶えません(特に先進国で)。わかりやすい批判は、それによって恩恵を受ける企業や人(多国籍企業や投資家など)とそれ以外の人との格差が広がった、というものです。

ここ数年の間、日本を含む多くの国で、ポピュリズム(大衆迎合主義)やナショナリズム(国粋主義)の傾向を帯びた勢力が表舞台に出てきました。代表例は「米国第一」を掲げるトランプ大統領です。そうした現象は急速なグローバル化への反発から生まれた、という理解も、完全な間違いとは言えません。

今年もエリートが大集合

先週、スイスで世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開かれました。世界的に活躍する政治・経済のリーダーらが講演や討論をしたり親睦を深めたりする、グローバルエリートの華やかな集いです。

ここでの主なテーマも、グローバリゼーションの行方についてでした。世界経済の減速、地球環境問題、世界的な所得格差(図表2)も論点になりました。それらの対処には国際協調を要するからです。問題認識自体は正しいと言えるでしょう。しかし、解決策らしきものはほとんど示されませんでした。

責任は誰に?

これは当然のことです。環境や格差の問題に本気で取り組むには、既得権益の打破や超富裕層への課税強化が必要です。しかし権益の享受側であるエリート層が、それを自ら放棄するとは考えられません。

グローバル化という大潮流が、根本的に変わることはありません。しかしその利益が適切に分配されなければ、保護貿易策など反グローバル化の動きが並存し続けます。それは経済成長を圧迫し続けるでしょう。「世界経済の減速懸念」は、現在の格差構造を改めない限り、永続する懸念だと覚悟すべきです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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