米政府機関の閉鎖で「トランプ流」の限界が露呈

2019/01/17

金融市場は静観の構え

米国では、政府機関の一部が1か月近く閉鎖しています(国立公園の管理など、連邦政府が行う業務のうち約4分の1)。業務遂行に必要な支出(職員給与など)に関し、予算措置が頓挫しているためです。

それでも今の金融市場は、この問題を総じて静観しています。第一に、年明けから市場の気分が改善しているからです。米中の貿易摩擦が和らぐという期待、および米国の利上げペースが鈍化するとの観測などのためです。第二に、政府機関閉鎖による経済への影響は限定的、とみる人がまだ多いからです。

「国境の壁」をめぐる対立

しかし解決の糸口がつかめぬまま、閉鎖期間は史上最長となりました(図表1)。これが続けば、米経済への影響も広がるでしょう(もし3月末まで続くと1-3月期の経済成長率はマイナスになる可能性も)。

問題の構図は、さほど複雑ではありません。つまり「(米国とメキシコを隔てる)国境の壁」をめぐるトランプ大統領と民主党の対立です。その建設費を予算案に含めることをトランプ氏が求めている一方、下院多数派である民主党はこれに反対しているのです(予算成立には議会の可決と大統領の署名が必要)。

空想的ナショナリズムの限界

今回の騒動は、ナショナリズムを利用した政治手法の限界が露呈したものだと言えます。「脅威」をあおり、わかりやすい(しかし非現実的な)行動を約束し、「愛国者」の熱狂を喚起する、というものです。

国境の壁については、不法移民(未手続で定住する移民)の脅威から米国民を守るため、というのが建設を目指す理由です。しかし事実をみると、メキシコから越境した不法移民の犯罪率は、特に高くありません(図表2)。そのため不法移民が脅威だとあおっても、国民全体から支持を得るのは困難です。

自縄自縛に陥ったトランプ氏

そもそも不法移民の過半は、ビザ(入国許可証)を得た上で入国し、期限が切れた後も米国にとどまることで発生しています。よって頑丈な国境の壁を完備したとしても、問題の解決には程遠いのです。

また現状、物理的な国境はたしかに盤石でないものの、これを越えてくる不法移民は近年激減しています(図表3)。したがって、今が非常事態だと言うのは無理があります。しかし「壁の建設」を合言葉として集結したのが、同氏のコアな支持層です。来年の大統領選挙を見据えると、彼らを裏切れません。

米政治の安定は期待できない

国境の壁がトランプ陣営の旗印である以上、その建設を民主党が安易に認めるとは考えられません。民主党のリーダー格であるナンシー・ペロシ下院議長は非常に意志の強い人物なので、なおさらです。

望まれる打開策は、国境の壁はひとまず検討課題とした上、それ以外の政府機能再開に要する暫定予算を講じるというものです。もちろんこれは、問題の先送りにすぎません。国境管理や移民の問題で、米政治の機能不全は今後も頻発するでしょう(ただし金融市場がどう反応するかは、市場の気分次第)。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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