トランプ氏の常識破壊と日本銀行の政策修正

2018/07/27

利上げ批判

米国のトランプ大統領は常識外れの人物です。最近の「びっくり発言」は、米国(連邦準備制度理事会(FRB))の利上げはドル高をもたらし、自国産業の競争力を奪っている、などといったものです。

せっかく減税などで好転した景気を、利上げやそれに伴うドル高で冷やさないで欲しい、というのが発言の趣旨です。しかし先進諸国の建前上、政治は金融政策に介入しないことになっています。政権の意に沿って中央銀行が金融緩和ばかり行うと、インフレやバブルなど副作用が生じかねないからです。また、為替は市場に委ねるべきであり政府や中央銀行はそれを操作しない、というのが基本ルールです。

トランプ氏の真骨頂は建前やルールの破壊

もっとも他国でそうした建前やルールが守られているかと言うと、怪しい限りです。特に日銀の金融緩和の場合、円安を望む安倍政権の意向を「忖度」したものであることは、誰でもわかります。それほど極端でないにせよ、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和も、暗黙の狙いの一つはユーロ高の抑制です。

つまりトランプ氏は、ほかの人や国がこっそり行っていることを、あからさまに行おうとしているだけ、と言えます。そのような本音ベースの政治こそ、同氏の支持率(図表1)が意外な底堅さを保つ理由でしょう。常識人たちが作り上げた建前やルールの偽善ぶりを暴き、あっさり破壊してしまうのです。

「米欧vs.ロシア」の建前も無視

今月の米露首脳会談でも、トランプ氏は既存の常識や建前をほぼ無視しました。米国や欧州連合(EU)にとって実際上の仮想敵国であるロシアのプーチン大統領に対し、並々ならぬ尊敬を示したのです。

しかし米欧がロシアを「邪悪な敵」と呼ぶのは、かなり偽善的です。第一、欧州とロシアは、経済面では緊密に結びついています(例えばドイツはロシアの天然ガスに依存)。また、イラク侵攻(2003年)などを行った米国は、ロシアのクリミア半島侵攻(2014年)を非難する道義的資格を欠いています。

常識破壊が生んだ朝鮮情勢の急展開

トランプ氏の「常識破壊」は、ときには良い結果を生みます。すなわち北朝鮮をめぐる急展開です。

朝鮮半島の緊張緩和は、韓国・文大統領の主導により、誰が米大統領でも進んでいたはずです。ただ、北朝鮮は信用できない、米朝会談は金正恩氏の地位を高めるだけ、といった常識的な声を無視するトランプ氏だからこそ、早期の歴史的会談(6月)が実現したのです。ミサイルが飛んでくると騒いでいた日本の多くのメディアや政治家は、沢山の命がひとまず救われたことをトランプ氏に感謝すべきです。

日銀の意味不明な建前もトランプ氏には通用しない

つまり、当然とされてきた常識が正しいとは限りません。また、あらゆる建前の背後には、身勝手な本心や「大人の事情」が潜んでいます。それらを本能で察知し、暴露してしまうのがトランプ氏です。

金融政策や為替に関するトランプ氏の発言については、FRBはこれを聞き流すでしょう。しかし日銀は、同氏の意向を「忖度」せざるを得なくなります。異次元緩和はデフレ脱却に向けた国内政策であり通貨安政策ではない、という建前は通じません。日本円は安すぎる(図表2)との批判をかわすには、長期金利を0%程度に抑えるという円安誘導策を、徐々に正常化する(市場に委ねる)しかないのです。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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