中国(深圳)取材報告②-「中国の世紀」は悪夢なのか?
貿易摩擦の行方
米国と中国が脅し合っている貿易制限や投資規制は、本格化すれば世界経済を混乱に陥れかねません。
しかし貿易摩擦がエスカレートする可能性は、高くないでしょう。例えば関税の引上げ合戦によって原材料や商品が値上がりすれば、米国の産業や消費者もダメージを受けます。そうした当然のことを、貿易戦争を仕掛けている米国のトランプ政権や、その熱烈な支持者も認識せざるを得なくなるはずです。トランプ大統領は思想よりも実利を優先するので、自らの政治基盤を損なうことはしたくないでしょう。
「米中最終決戦」も起こらない
最悪のシナリオは、米中二大国の対立が通商問題を超えて軍事的な衝突に発展する、というものです。
しかしそのようなシナリオが実現する可能性は、さらに低いと考えられます。鍵を握るのは相互の国民感情ですが、米国の反中感情や中国の反米感情が顕著に高まる兆しは、特にみられないからです。とりわけ中国では、むしろ米国が好きだという人が多いのです。例えば、富裕層を中心に米国の大学への留学熱は高まる一方です。米国企業の携帯端末や米国のコーヒーチェーンなども、中国で大人気です。
日本と同じ道をたどるのか?
今の米国は、かつてほどの覇権国(経済、政治、軍事などにおいて、他国に対し最大の影響力を振るう国)ではありません。この地政学的な変化が、特にアジアでの中国の覇権強化を促しているのです。
それでも日本では、中国は米国の圧力に敗れスランプに陥る、との見方や願望が漂っています。1980年代後半に全盛期を迎えた日本と同じことになる、というのです。たしかに当時の日本は、世界の中心に躍り出るほどの勢いでした。しかしバブル崩壊後に急失速、長期停滞期に入りました(現在も継続中)。
日本になくて中国にあるもの
しかし当時の日本と現在の中国が置かれた状況では、米国の弱体化に加え、多くの違いがあります。
何より人口1.2億人の日本と13.8億人の中国では、内需(個人消費やインフラ投資)の厚みが違います。よって追加関税で対米輸出が若干減少するだけでは、大きな打撃とならないでしょう。また当時の日本は、1人あたり経済規模で米国を追い越すほどでした(図表1)。これに対し、現在の中国については発展途上の農村部も多く残っているため、まだ米国の7分の1です(ただし、中国の経済規模は過小評価されている可能性あり)。これは、まだ大きな成長余力が残っていることを意味します。実際、成長実感を多くの人が味わっているので、中国に行って直ちに気づくのは、人々の明るい表情や服装です。
「中国の世紀」は悪夢ではない
加えて中国は、地域により文化や気質がかなり異なります。そうした多様性は、柔軟な発想の土壌となります。ただ習近平氏への権限・権威の集中(写真1)は、社会の硬直化をもたらす恐れがあります。しかしそれは、大衆迎合的な策を抑え長期的な視野から政策を推進できる、という側面も持っています。
米国の支配に慣れた人は、中国の強大化を不安に思うでしょう。しかし、米国と比べて中国は異様で危険な国、とは言い切れません。米国のように思想や体制を他国に押しつけることも、ほとんどありません。あるいは日常レベルで言うと、例えば深圳の街や地下鉄(写真2)はニューヨークよりも清潔で安全です。反日感情も全く感じられません。よって日本は、中国の躍進を恐怖する必要などないのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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